私、わかっちゃったんです、真犯人

【第26回】
私に何ができるんだろう。
疑われている先輩のために、停学になってまで力を尽くした菜々美。
そんな親友に後を託され、彩子は勇気を奮い起こす。
小説すばる新人賞作家・行成薫が描く、先読み不能の「超能力」エンターテインメント!

「岡田先生!」

 放課後、グラウンドでは、陸上部が練習を始めていた。ストップウォッチを片手に、大声で怒鳴る岡田に、彩子は思い切って声をかけた。

「うん? なんだ、サッカー部の?」

「ちょっとだけ、お時間いただけませんか」

「練習中だぞ? 後にしてくれ」

「ちょっとだけでいいんです。あの、私、わかっちゃったんです。ボヤ騒ぎの、真犯人」

 岡田の眉が、ぴくりと動いた。

「なんだと?」

「来栖先輩は犯人じゃありません。証拠を見せますから、来てください」

 彩子が、部室棟を指さす。岡田は、ちっと舌打ちをしてから、陸上部の部員たちに向かって、サーキットやっとけ! と怒鳴った。

 誰が吸ったかわからない吸い殻に触れるのは、勇気が要った。全身を駆け巡る嫌悪感に堪えながら、彩子はポリ袋を開け、深呼吸をした。

 菜々美がサッカー部のマネージャーになったのは、来栖先輩に近づきたい一心だったかもしれない。動機は不純ではあったが、菜々美はマネージャーとして、彩子の何倍も努力していた。ただ、カッコイイ先輩が好き、というだけで、あんなに頑張ることができるだろうか。

 机に貼られた付箋紙をはがしたときに、ほんの少しだけ、菜々美の残留思念が彩子の中に入ってきた。夜中に窓ガラスを割って侵入して、職員室に保管してあったタバコの吸い殻を慌てて探す。警報器に追い立てられ、恐怖と焦りに苛まれる菜々美の心を感じる。ようやく、岡田の机の引き出しから見つけたポリ袋を摑んで、教室まで全力で走る。車の音。警備員がやってくる。菜々美は、汗ばんだ手で自分の付箋をはがし、彩子の机に貼りつけた。最後に残っていたのは、なんとしても、来栖先輩を引退させたくない、試合に出してあげたい、という、強い想いだ。

「先生は、サイコメトリーって、知ってますか?」

「サイコ? なんだそれは」

 部室棟の裏側、サッカー部の部室の窓の見える場所で、彩子はようやく口を開いた。岡田は不機嫌そうな顔で、知らないな、と答えた。

「物に残った、残留思念を読み取る力なんです。私、サイコメトリーができるんです」

「何をバカなことを言ってるんだ、お前は? からかってるつもりなら、俺は戻るぞ」

「見てください!」

 立ち去ろうとする岡田の背中に向かって、彩子は、叫んだ。ポケットから、吸い殻の入ったポリ袋を出した。お前、それ、と、岡田が語気を荒らげ、彩子の手からポリ袋をひったくった。

「なんでお前が持ってるんだ」

「タバコに残っていた、残留思念を読み取りました」

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