もはや日本にしかいない専業主婦
はたらかずにぶらぶらしている若者のことを、「ニート」と呼びます。最初にイギリスで使われ、日本でも2000年代のはじめに広く知られるようになりました。
欧米や日本など先進国の国際機関OECD(経済協力開発機構)がニートについての報告書を出しています(2017年5月)。それによると、15歳から29歳の若者のうち、日本には170万人(10・1%)ものニートがいます。びっくりするような数字ですが、とはいえ、OECDの平均は14・7%ですから日本の若者はまだまだ恵まれています。若者の失業というのは、どの国でも大問題なのです。
日本の若者の10人に1人がニートという数字が報じられると、困惑が広がりました。これまでの政府の発表とあまりにもかけ離れていたからです。
内閣府の調査では、15歳から29歳の「若年無業者」は36万人(2014年)で、OECDの数字の2割にしかなりません。人口比では約1・4%で70人に1人くらいです。なぜこれほど大きなちがいがあるのでしょうか。
それは、日本のニート(若年無業者)の定義が、「非労働力人口のうち家事も通学もしていない男女」だからです。それに対してOECDの基準では、高校や大学に通っていたり、仕事のための訓練を受けている若者はニートから除外されますが、「家事」については考慮されていません。
グローバル・スタンダード(世界基準)では、「家事手伝い」はもちろん、「専業主婦」もニートだったのです。
自己紹介で「ハウスワイフ」はヤバい
なぜこんなことになるのでしょうか。各国別の女性の就業率(労働力率)を見るとその理由がわかります。
たとえば、北欧のスウェーデンでは25歳から60歳まで、ほぼ9割の女性がはたらいています。他の先進国も同じで、ヨーロッパでは8割以上の女性がはたらきつづけています。
ところが先進国のなかで、日本の女性だけははたらき方がちがっています。25歳までは他の国と同様、8割の女性が仕事をするのですが、そこから30代にかけて就業率が7割程度まで落ち込み、40代からまた上昇をはじめるのです。
これは「M字カーブ」と呼ばれていて、日本の女性が出産や育児を機に専業主婦になり、子どもに手がかからなくなってパートなどではたらきに出ることを示しています。当たり前だと思うかもしれませんが、こんな状況は先進国ではいまでは日本だけにしか見られません。欧米の女性たちは、子どもが小さいときもはたらきつづけているのです。
このようにして先進国では、「専業主婦」は絶滅危惧種になりました。欧米で暮らしていると、日常生活で「ハウスワイフ」と出会うことなどないのです。
このことは、日本人の夫が妻といっしょに海外旅行に行くとき、ちょっとした問題になります。
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