順風満帆に見えるビットコインにも、いくつか技術的な課題があります。
一つは、取引が完了するまでの時間をもっと短縮できないかということ。
二つめは、膨らみ続けるブロックのデータ量を圧縮できないかということ。三つめは、マイニングの難易度が上がり続けてペイできなくなるのではないか、という問題です。
即時決済に向けた取り組み
ビットコインをはじめとする仮想通貨で、取引が完了するまでに時間がかかり、即時決済できないのは、中央にサーバーを持たず、P2Pネットワークで相互承認するというブロックチェーンの基本設計にかかわる部分なので、しかたがない面があります。
そもそも初期の設計思想としては、中央にサーバーを置かず、管理者不在で、相互に承認し合うP2P型のネットワークシステムのほうがコスト的に安くできたのは間違いありません。
しかし、現在のようにビットコインの採掘が進み、マイニングの難易度が上がってくると、レースに参加するためのマシンパワーも電気代もどんどん上がっていきます。
また、過去の取引記録のブロックチェーンが長大になり、重いデータをやりとりするための通信コストも誰かが負担していることになるため、一カ所でまとめて集中処理したほうが効率がいいのではないかという議論も当然あります。
ブロックの認証は約10分ごとに行われています。つまり、10分ごとに切り替わる鍵を、世界中のマイナーたちが一斉に計算して求め、一番先に見つけた人がビットコインをもらうわけです。
見つかった鍵が正しいかどうかは、二番手以降の人たちがチェックします。複数の人が承認すれば、そのブロックは認証され、ブロックチェーンの最後尾に加えられます。ブロックが認証され、ブロックチェーンの末尾にガチャンとはまれば取引成立です。ビットコインの取引に時間がかかるのは、みんなで認証作業をしているからです。
しかし、マイニングの作業自体は、10分ごとに切り替わる鍵を見つけるために、ランダムに現れる数字をしらみつぶしに調べているだけで、それ以上の意味はありません。計算結果が何か別の役に立ったりすることはないのです。設備投資や電気代を考えると、ものすごいムダな作業を延々としているともいえなくもありません。
そこで、承認されるまでおよそ10分かかるという時間制限をなんとか緩和できないかと考える人たちも出てきています。
優良な取引所だけを結ぶ「サイドチェーン」
たとえば、一つひとつの取引が正しい取引かどうかを検証しなければいけないのは、ビットコインを送る人と受け取る人が誰だかわからないからです。なかには怪しい人が紛れているかもしれないので、不正な取引を防ぐために検証作業が必要なのですが、最初から信頼できる人同士の取引だとわかっていれば、いちいち検証しなくてもいいのではないか。
そういう発想で、日本や米国、中国などの実績のある取引所だけを結び、その間の取引については検証なしに即時承認する「サイドチェーン」を運用する会社が出てきています。
実績のある取引所に口座を持っている人たちは、すでに本人確認などの手続きが済んでいるから信頼できる、という理屈です。
そうなると、サイドチェーンに参加した取引所経由のトランザクションを集めたブロックのほうがいち早く承認されることになり、「即時決済」に近づいていきます。他の取引所よりも有利になるため、自分たちのサイドチェーンネットワークに参加したければ、その分手数料を払え、というビジネスも成り立ちます。取引所を相手に、主な取引所を束ねてサイドチェーンをつくろうというレイヤーのベンチャーが出てきたのです。
しかし、取引所としては、手数料を支払ってまでサイドチェーンに加入するメリットがあるかどうか、見極める必要があります。サイドチェーンのアプローチは、多くの取引所が加入すれば、他の取引所にもメリットが出る「ネットワーク効果」があるモデルのため、初期の加入取引所を巻き込むことが大きな障害になっています。
セグウィット問題
続いて、増え続けるブロックのデータ量を圧縮できないかという課題についてです。
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