2004年10月10日、「新選組!」の最終収録が行われる。
江戸時代末期の日本を仲間たちとともに駆け抜けた近藤勇が、やがて激変する時代の中に反逆者として処刑されるシーンで、1年にわたるこのドラマは幕を閉じる。
最期のセリフは苦楽をともにした盟友・土方歳三の名前、三谷はその解釈を香取自身に託した。
ラストカットで近藤勇は小さな笑みを浮かべながらつぶやく。
〝トシ〟
収録後、三谷は香取にセリフの意味、そして微笑んだ理由を尋ねた。
「本番直前まで頭の中は真っ白だったそうだ。カメラが回った時、彼の頭に浮かんだ言葉は、『トシ、次は何をしようか』だったという。十代の頃から行動を共にしてきた親友への最期の言葉として、これより相応しいものがあるだろうか」
そして三谷は脚本家の想像を遥かに超えたというその表情を、こう書き残している。
「あれは希望の笑顔だった」
近藤勇と共に生き抜いた27歳の香取慎吾は、その笑顔に新たな命を得た。
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