当たり前の中で誰にも気づかれないままひっそりと大人になる者がいる。

28年間のSMAPの活動とその思いを、数々の言動から振り返り、幼少期から三十代に至るまでのファンの女性の28年の歴史と共に纏めあげ、「アイドルとは、ファンとは何か」を問い直すアイドルとファンのノンフィクション書籍『SMAPと、とあるファンの物語』。本書を公開する連載、30回目。05年、彼らはアーティストの単独ライブとして初の国立競技場に立つ。名実共にトップに立った彼らの眼前に、昔見た「夢」がーー。

 2004年10月10日、「新選組!」の最終収録が行われる。

 江戸時代末期の日本を仲間たちとともに駆け抜けた近藤勇が、やがて激変する時代の中に反逆者として処刑されるシーンで、1年にわたるこのドラマは幕を閉じる。

 最期のセリフは苦楽をともにした盟友・土方歳三の名前、三谷はその解釈を香取自身に託した。

 ラストカットで近藤勇は小さな笑みを浮かべながらつぶやく。

〝トシ〟

 収録後、三谷は香取にセリフの意味、そして微笑んだ理由を尋ねた。

「本番直前まで頭の中は真っ白だったそうだ。カメラが回った時、彼の頭に浮かんだ言葉は、『トシ、次は何をしようか』だったという。十代の頃から行動を共にしてきた親友への最期の言葉として、これより相応しいものがあるだろうか」

 そして三谷は脚本家の想像を遥かに超えたというその表情を、こう書き残している。

「あれは希望の笑顔だった」

 近藤勇と共に生き抜いた27歳の香取慎吾は、その笑顔に新たな命を得た。

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SMAPの28年間の活動と、とあるファンの女性の28年間。決して交わることはなかった。でも、支えられていた。そんな両者の紆余曲折の歩みから見えてくる、アイドルの“意味”。アイドル文化が生み落とした新世代の書き手によるSMAPとそのファンのノンフィクション。

この連載について

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SMAPとそのファンの物語—あの頃の未来に私たちは立ってはいないけど

乗田綾子

転校を繰り返し、不登校にもなってしまった。思い焦がれた上京は、失敗した。願ったとおりの現実を生きるのは、難しい。だけど――。小学校低学年から30歳に至るまで、とある女性の人生にずっと寄り添っていたのは、親でも彼氏でもなくアイドルだった...もっと読む

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