「まともさ」や「綺麗事」に違和感を覚えるあなたへ
『堕落論』坂口安吾
(新潮社)初出1947
高潔 VS 堕落
不況になると「坂口安吾」が流行るらしい。すぐに「堕ちて」しまう人間の性を、じゃあどうするかって本です。#戦後の代表作家による評論集 #無頼派 #坂口安吾の思想を知るならこの一冊 #小説家が見る日本文化・日本人の思想を知る #一つひとつの評論がかなり短いので、合間の読書にもおすすめ #パンチのあるものを読みたいときに!
世の中には、どうしたって文章がきらきらしてしまう人がいる。
たとえば小林秀雄、たとえば三島由紀夫。文章が華麗で美しくて、きらきらしすぎて、星が瞬くみたいにチカチカする文章を書く人がいる。
正直中身が頭に入ってこないくらい。
逆に、どうしたって文章が日本刀みたいに鋭くて、カッコよくしかいられない人がいる。
厳しくて睨みがきいていて端正で、どんなに崩して汗をかきっぱなしでも、絵になってしまうむかしの映画俳優みたいな文章。
私にとってその最たる書き手は、坂口安吾だ。
『堕落論』を初めて読んだのは大学受験を控えた秋だった。
本当に、受験勉強用に固めた脳みそが溶けそうになって焦ったことを覚えている。
やばい、これ今読んだらだめなやつだ。
《人生を狂わせるこの一言》
堕落ということの驚くべき平凡さや平凡な当然さに比べると、あのすさまじい偉大な破壊の愛情や運命に従順な人間達の美しさも、泡沫のような虚しい幻影にすぎないという気持がする。
一読してすぐさま図書室に戻したけれど、どうしてももう一度読みたくなって、もう一度だけ借り直したことを覚えている。
平成生まれの能天気な平和ボケ人間からすると、ちょっと息を呑んでしまう本
「堕落論」が発表されたのは、1946年の4月。戦後の荒地において、坂口安吾は戦前と戦後を比較しつつ、言う。
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