高橋源一郎「​二葉亭四迷に対するシンパシー」

【第7回】1人目は高橋源一郎さんのご登場です。ご自身の代表作3点として挙げたのは、『さようなら、ギャングたち』(1981)、『日本文学盛衰史』(2002)、『さよならクリストファー・ロビン』(2012)。『日本文学盛衰史』では、二葉亭四迷に強く共感されています。この「作家になれなかった人」を書かずにはいられなかったのはなぜか?(聞き手・武田将明)

二葉亭四迷に対するシンパシー

武田将明(以下、武田) このように、ご自身が実際に体験した出来事も混ぜていらっしゃるんですが、作家・高橋源一郎を投影するという意味では、二葉亭四迷に対するシンパシーがすごく強いのではないかという印象を抱きました。

『日本文学盛衰史』のなかで強調されているのは、四迷という作家は文学を言葉の問題から根源的に捉える人物である、ということではないでしょうか。

だからこそ四迷は文学を疑うことになってしまった。そのジレンマのなかで、それでも書いている立場におそらく共感されている。これは本日のインタヴューの最初にお話しされた、失語状態を通じて作家になったというご自身の経験にどこか重なるのかな、という感想を抱きました。

高橋源一郎(以下、高橋) まあ、こう言っちゃなんですけど、二葉亭四迷を読み始めた頃には、こんなに自分に似た人がいるんだ、と。四迷という人は、すごく簡単に言うと、作家になれなかった人なんですね。

もちろん『浮雲』を書いて、優れた翻訳もしていますが、当人は書きたいものが他にあった。でも、いつも書けないんですよね。あれだけ著作集が出ているし、文学史にとって非常に大切な仕事をしているし、翻訳なんか大変素晴らしいんですけれども、これがいわゆる作品だろうかっていうと、微妙なところがある。何か上手くいってない。

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コメント

hiranok (cakes(ケイクス)) https://t.co/d7xBL94n31 #NewsPicks 3年弱前 replyretweetfavorite

bear_yoshi 「四迷自身も、自分のことを「偽者じゃないか」というふうにずっと言っている。」 /  3年弱前 replyretweetfavorite