ピカソがお金持ちだったわけ─21世紀、お金の時代は終わる

モノをお金でやり取りする“資本主義”から
コトを時間でやり取りする“時間主義”
モノを信用で直接やり取りする“記帳主義”
最後にコトを信用でやり取りする“信用主義”へ —。

今、お金を中心に大きな転換が起こっています。

お金はこれからどうなるのか?その歴史と仕組み、変化、未来まですっきり解説!
山口揚平の書籍「新しい時代のお金の教科書」を特別公開します。

はじめに

 この本のテーマは、「お金はこれからどうなるのか?」です。

 これまで「お金はもっと欲しい」「お金さえあれば人生は安泰だ」というものでした。しかし、21世紀に入ってどうやら様子が変わってきました。

 例えばみんなが欲しがるものが、お金では買えないもの(人からの承認など)になってきたこと、あるいはお金自体も円やドルなどの国が発行するものからビットコイン(Bitcoin)などへと姿を変えていること、また信用がある人は、クラウドファンディングや寄付などでお金を簡単に集めやすくなったことなどです。

 みんなが欲しがるものが変わり、お金自体も変わり、そしてそのお金も信用によって創りやすくなる、こうなってくると大事なことは、今のお金(100万円とか1億円とか)を貯めることではなく、もっと個人の信用を積み上げてくることだとわかります。こうしたお金を取り巻く環境の変化を大局的に見て、これからの生き方を考えるというのが本書の趣旨です。

 本書では、お金の起源、歴史、そしてこれからお金に影響を与える大きな変化、お金の未来までをできるだけ体系的に紹介しています。

 お金をめぐって大きな転換点が来ている今、まずは表面的な円やドルといった目に見えるお金ではなく、お金の本質に目を向けなければなりません。それはつまりお金とはそもそも一体なんなのか、ということです。

 まずお金の起源を紐解くことでその本質を示すことにし、現代の通貨に至るまでの歴史について見ていきましょう。それからお金の正体をもう少し詳しく話します。

 さらにお金の変遷に影響を与えた4つの変化として、国家・経済・社会・技術の変化を人々の欲求とそれを交換する仕組みの二つの観点から紐解いていきます。そしてお金の未来について考え、最後には、身につけるべきお金の習慣を紹介してゆきます。

 ぜひ最後までお付き合いください。


ピカソがお金持ちだったわけ──お金の歴史


お金の本質を見抜いていたピカソ

 これからお金にまつわるとても面白い話を始めます。

 最初に、有名な画家ピカソについて、少しお話をします。なぜならこのピカソこそがお金の天才だったからです。彼はお金の正体、その本質を知っていました。実際、ピカソが亡くなる時には7500億円もの資産を持っていたと言われます。

 ピカソの本名はご存知ですか?

 パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・シブリアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソというのが全体の名前です。とても長いです。様々な聖人や親戚、親友の名前をもらって付け加えていったからだと言われています。

 その名をつなげることでピカソは縁者と協力者を募っていきました。そうすることでピカソは様々な縁、今で言うネットワークを広げ深めていったのです。

 貨幣の本質、すなわち貨幣とはコミュニケーションのための言語であって、その価値はネットワークと信用であるとピカソはわかっていたのです。



ピカソは物語とつながりを通してお金を得ていた

 ピカソは一流の売り手でもありました。通常の画家は絵を画商に託して、自らは創作活動をするわけですが、ピカソは違いました。絵を描き上げたら画商達を集めて、絵を見せる前に一時間くらい話します。この絵にどのような背景があり、どのような心象風景を描いたものなのかを話すのです。そして最後におもむろにシートをまくりぱっと絵を見せます。すると絵に物語がついてきて、ただ絵を見たときよりもずっと価値を感じるのです。

 人はモノを買うのではなく、物語を買う、それが彼にはわかっていたのです。そうやって絵の価値と価格を上げていったわけです。


ピカソは対価をワインで受け取った

 シャトー・ムートン・ロートシルトという有名なワインがあります。そのワインのラベルは毎年有名な画家に描いてもらっていました。そのラベルのひとつはピカソが描いたものであり、2017年では1本約18万円になっています。このワインのラベルを描いたとき、ピカソはその代金を「お金でなくワインでください」と言ったのです。

 なぜならその方が、将来的には価値が上がると考えたからです。年数が経つと、当然ワインの値段は上がるわけです。そしてピカソもますます創作活動をするため、有名になっていきます。そうするとワインの熟成年数とピカソの名声の上がり方の掛け算で値段が上がっていきます。一挙両得。

 画家は通常、自分が最初に売った絵がその後いくら高値で取引されても一銭も入ってきません。しかし、ワインならプレミアムがつき値段が上がりますから、絵を売った後でも収入を得られます。どんどん値が上がり、しかもそれを画家である自分が保有しているわけですからその分の付加価値もつきます。ピカソにとって自分のラベルのワインは最高の投資先になったわけです。


なぜピカソは小切手を使ったのか?

 またピカソは日常生活の少額の支払いであっても好んで小切手を使っていました。例えば画材や絵の具を買う際に、小切手を出していたのです。なぜでしょうか?

 普通の人は小切手を渡されたら、銀行で換金します。でもピカソからもらった小切手は、有名なピカソのサインが書いてあるので、店主は銀行で換金しないのですね。だからピカソは実際には代金を支払わずに済んだという話です。ここではピカソのサインが紙幣の代わりをしています。自分のサインに価値がありそれは貨幣となりうる、ということまでわかっていたわけですから非常に賢いです。

 ピカソにまつわるこういう話は他にもたくさんあります。ピカソほどおそろしく頭の切れるアーティストはいませんでした。彼は本当の天才でした。ものの本質を見抜いていたわけです。それがお金というとても抽象的なものであったとしても、です。

 これは、前著『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』(ダイヤモンド社)に書いた逸話の一部です。ご興味があればごらんください。

 さて、これからみなさんに、そのめくるめくお金の世界を披露してゆきましょう。不可解で謎が多いお金。その正体は何なのでしょうか?

 次回は、お金の起源についてです。お金の起源は物々交換ではなく〇〇だった?ということからお金の歴史を紐解いてゆきます。

本記事は、12/7発売 書籍『新しい時代のお金の教科書』(筑摩書房刊)の内容を一部抜粋、編集して掲載しています。予約受付中!

この連載について

新しい時代のお金の教科書

山口揚平

モノをお金でやり取りする“資本主義”から コトを時間でやり取りする“時間主義” モノを信用で直接やり取りする“記帳主義” 最後にコトを信用でやり取りする“信用主義”へ —。 今、お金を中心に大きな転換が起こってい...もっと読む

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コメント

teradrunksan おもしろい 8ヶ月前 replyretweetfavorite

__tricatel @masayachiba https://t.co/PConO42Cqz みたいな感じですか? 8ヶ月前 replyretweetfavorite

marekingu #スマートニュース 8ヶ月前 replyretweetfavorite

a_sue 岡田斗司夫が言ってる評価経済社会だよね > 8ヶ月前 replyretweetfavorite