信用リスクとは何か
前回、金利13%の定期預金(ベトナムドン)の話をしましたが、世界には高金利の通貨がほかにもあります。ほとんどのひとは、「預金金利は高いほど有利だ」と考えています。だったら、お金はベトナムの銀行に預ければいいのでしょうか。今回は、外貨預金と為替の関係を考えてみましょう。
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「金利13%の定期預金がある」と聞いても、大金を持ってベトナムに行くひとは多くないでしょう。アジアの貧しい国」の聞いたこともない銀行に、大切なお金を預けるのが不安だからです。
銀行が倒産するなどして預けたお金が返ってこなくなることを「信用リスク」といいます。ベトナムドンは、日本円に比べて信用リスクが高いので、その分、金利が高くないと割が合いません。「金利13%」と聞いてもあまりうれしくないのはこのためです。
そこで話をわかりやすくするために、米ドル預金の金利が年5%だとしましょう。今や米ドルの外貨預金も超低金利になってしまいましたが、2006年には5%を超えていましたから、荒唐無稽な話というわけではありません。
米ドルと日本円なら、信用リスクは同じです(国債の格付けは米国のほうが高いので、米ドル預金のほうが安心ともいえます)。それなのに、日本円で預金すれば金利0%、米ドル預金なら金利5%だとしたら、お金は米ドルの外貨預金にしたほうがぜったい得に決まっています——。この考え方は正しいのでしょうか。
相手の立場に立つと金融の仕組みが見えてくる
金融商品の仕組みを理解するもっともシンプルな方法は、「相手の立場になって考える」ことです(人間関係と同じですね)。あなたが日本円を持っていて、「米ドル預金はぜったい得だ」と考えたとしましょう。立場を逆にすると、金利5%の米ドル預金ができるアメリカ人にとって、金利0%の円預金は「ぜったい損だ」ということになります。
ところで、あなたが米ドル預金をするためには、誰かに両替してもらわなければなりません。「両替」とは、日本円と米ドルを交換することです。
話のポイントがわかったでしょうか? あなたが日本円を米ドルに両替するためには、どこかのアメリカ人が米ドルと交換してくれなければなりません。ところが、「米ドルを日本円に両替するのはぜったい損」なのです。なんといっても、5%の利息がゼロになってしまうのですから……。