湊エリカの悠次郎との赤裸々な思い出話を、さっきまで言い争いをしていた片山智恵子と猪子由美までも、だまって聞いていた。
(そんなことまで言う?)と百鳥ユウカは思っていたが、もう30年以上も前の話だから、きっと秘密を話すハードルも下がっているのだろう。湊エリカは、悠次郎との思い出を綺麗なものとして、心の片隅にずっと取っておいたらしい。話し終えると、満足げな顔をしていた。
ところが、湊エリカの話を聞いて、口を開いた人間がいた。
助川光子だった。
ふくよかな面持ちをしていて、でっぷりとした下肢は公民館の畳にぺたっと崩している。全体的に鏡餅のような体躯の彼女が、座卓に身を乗り出してこう言った。
「そこまでみなさんがおっしゃるなら、私も話しをしていいかしら」
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