インフルエンザになりました
「インフルエンザですね」と通告する時の医者の顔は必ずドヤ顔、と聞いたことがあったのだが、確かに医者はドヤ顔であった。職業柄、患者を納得させるなど、ドヤ顔をうまく使いこなすべきだとは思うけれど、噂通りだ、と納得するのを急いでしまい、あちらが見越している動揺を見せるのが遅れてしまった。2秒遅れくらいで「マジっすか!?」と言うと、定型文での説明に入った。病状を説明した後、一呼吸も置かずに「ただ、お勤めの会社ごとにインフルエンザについての規約があると思います」と言われる。「ですので、会社の総務部などに一度ご連絡を入れてみてください。解熱して何日後から出社可など定められているはずです」と続く。
どうして、ちょっとした男性を見ると会社勤めだと決めつけるのか、と不信感を募らせ、一連の説明が終わった後に、満を持して「ボク、フリーランスなんです」と告げると、微笑みの中に憤りを混ぜ込みながら「ああ、そうでしたか。ならば最初からそう言ってくだされば」と言うので、話を中断させるタイミングなかっただろと思いながら、「いや、熱が39度7分もあると、すっかり反応が鈍くなりますね」と、渾身の高熱言い訳を投じると、表情を曇らせたまま「それではお大事に」と診察室から追い出されてしまった。
「本当に悪いのは日馬富士だけか」という方向性
というわけで高熱の中、睡眠と食事の間にワイドショーを見続けるという2日間を過ごしたが、沈黙を続ける貴乃花親方が車に乗り込む映像や部屋に戻る映像を、100回は見たのではないか。テロップを見なくても何日の映像かが分かるようになった。それにしても、本人含め近くにいた全員が、日馬富士が貴ノ岩を殴ったことを認めているというのに、なぜ殴ったか、何で殴ったかの詮索を重ね、あたかも殴られた側にも非があったのではないかという空気を強めようとするのには違和感を覚える。こういう時にそびえ立つ、「体育会系社会特有の上下関係を守らないとは何事だ」が意味を強める感じが嫌い。人は人を暴行してはいけない、それだけのことではないのか。
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