スパルタ特訓の日々。万全を尽くして裁判に挑む。

15歳で起業した著者が超富裕層になるまでの15年を振り返る『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』特別掲載、第32回。社長とともに裁判に向けての練習を始めた正田さん。あらゆる場面に対抗できるよう、準備に準備を重ね、徹底的に対策をとります。果たしてその結果はどうなるのでしょうか…。

裁判に勝つためのスパルタ特訓

 普段の生活では肝の据わったところを見せる社長だったが、公的な組織が相手となると、どうも空回りしてしまう傾向があった。裁判所からの手紙で、自分の名前の前に「被告」とついているのを見て、自分は捕まってしまうかもしれないと的外れな心配をしていた。法廷で裁判官と弁護士の前に立つとなれば、極度にあがってしまい、とんちんかんなことを言い出すことになるはずだ。こうした事態を避けるためにも、練習だけは完璧にしておきたかった。

 社長が日本に戻ってくると、さっそく練習をスタートさせた。相手の弁護士から意地の悪い質問をされたときに、しっかりと返答ができないと結果が大きく変わることがある。こうした事態を避けるための練習だった。

 法廷で行われる弁護士の質問には、主尋問と反対尋問があり、主尋問は味方の弁護士が質問し、反対尋問は相手側の弁護士によってなされていく。この2つのうち、重要なのは、意外かもしれないが主尋問のほうだ。裁判になると緊張してうまく話ができなくなってしまったり、突然それまでの打ち合わせとは全然違うことを言ってしまったりする人が多いからだ。

 もちろん、反対尋問でしっかりと相手の弁護士を言い負かせればよいのだが、素人が弁護士をなかなか言い負かせられるものではないし、相手がどんな質問をしてくるかを予想するのも難しい。むしろ、主尋問でミスをすると致命傷になるため、主尋問の練習に力を入れるのが弁護士たちの基本戦略だ。

 しかし、僕はどちらの質問に対する練習もおろそかにしたくなかった。そこで、社長に対するスパルタ特訓が始まった。

 実際に練習してみると、僕が思ったとおり、社長はうまくしゃべることができなかった。当初は、係争となっている自分の店の名前さえも言い間違える始末だった。こんなことでは絶対に心証を悪くするので、何度も繰り返して練習してもらった。

 こちらはこちらで想定問答集を作り、本番さながらに社長に質問を投げかけていった。問答集を社長に渡し、穴埋め式になった問題に回答してもらった。さらには、正しい答弁を記憶できるように、写経のように書き写す作業を頼んだりもした。

 1回の練習時間は3時間に及んだ。練習が進んでいくにつれ、理路整然としゃべるのが得意ではない社長が答弁の内容を文章で覚えても、それを口頭で再現するのは難しいと思うようになった。しかも、文章で暗記しても、覚えたことを正確に喋ろうとするためどうしても棒読みのようになってしまう。そこで、社長が口にしやすそうな言葉を選んで模範答弁を作成し、それをボイスレコーダーに自分の声で録音してもらった。暇さえあればそれを聞いてもらって、体にしみこませようとしたのだ。

 練習はこれだけに留まらなかった。この事件を担当している弁護士以外の弁護士に頼んで意地悪な質問を社長に投げかけてもらい、そのやり取りを書き起こしたものをチェックしながら、「社長、この質問でこう答えていますけど、そうすると次の質問で別のことを掘り返されたりしますから、代わりにこう答えてください」といった念の入れ方で答弁の仕方を教え込んでいった。

 初対面の弁護士に意地悪な質問をされるという経験を積ませたかったため、相手側の弁護士と近い年齢の弁護士や司法書士の方にも時間を空けてもらい、社長の練習を手伝ってもらった。1回3時間の練習は、合計で50回は行ったはずだ。

 本番で緊張しないように、社長を実際に裁判所に連れて行き、他の裁判を傍聴してもらったこともあった。社長だけでなく、旧社時代の経理部長なども証人尋問に呼ばれていたので、彼らにも同じような練習をしてもらった。

 こうした裁判対応のノウハウは、それまでに経済案件でのいくつかの裁判を通して自分なりに学んでいったものだった。こうした地道な練習と準備を重ね、僕たちは裁判に臨んだのだ。

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15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと

正田圭

「僕は、どこにでもいるごく普通の子どもでした。両親はサラリーマンと専業主婦で、自分に特別な才能があったとも思えません」と語る著者、正田圭さん。そんな正田さんの「お金持ちになりたい!」という目覚めから、ついに超富裕層となった今日までの、...もっと読む

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