次から次へと降ってくる問題
目まぐるしい速さで買収の契約を結ぶと、いよいよ税務署による調査を受け入れることになった。
税務調査の対象となったのは、21の店舗を展開している飲食チェーンを運営する会社だった。出店エリアが広範囲にわたっているため、9カ所の税務署による合同調査という形になったようで、特別情報調査官という肩書の職員を筆頭に合計33人もの税務職員がやってきた。かなり気合を入れているのは一目瞭然だった。
33人を相手にするのかと考えると気が重くなったが、ここで踏ん張らないと再び多額の追徴課税を受ける可能性があるため、うまく対処していかなければならない。
幸い、税理士事務所に出資をしていた関係もあって税理士の知り合いは多かった。しかも、普段から税務調査用のためだけにおつきあいしている税理士事務所もあるので、そこに所属する4人の税理士に応援をお願いすることにした。この税理士事務所は国税庁のOBだけで構成されており、税務署対応のプロと言ってよかった。
こうして税務調査が始まったのだが、いつになっても終わりが見えず、結局すべてが終わったのは半年後のことだった。
当初、税務署側は追徴課税として3500万円ほどの支払いを命じてきたのだが、ここから延々と交渉が繰り広げられ、最終的には40万円の税金を納めることでなんとか調査を終えることができた。
当面の税金の問題を解消できたまではよかったが、問題はそれだけではなかった。次に浮上してきたのが、契約書問題だった。
社長が展開してきた飲食チェーンは、すでに述べたように直営10店舗のほかにフランチャイズ店が11店舗あった。
ところが、これらフランチャイズ店側と会社側は、正式な契約書を作成していなかった。これはすでに社長から聞いていたことではあったが、自分の会社になった今、いざ整理してみるとなるととにかく面倒な問題で、頭を抱えたくなってしまうほどだった。
僕のビジネスのスタイルは、買収した会社のいいところを最大限伸ばしていき、数年経ったら売るというものだ。つまり、将来的にこの会社を売却することも視野に入れている。その際、フランチャイズ契約をしている店舗との間に契約書が存在しないという訳のわからない問題を抱えているとなれば、こちらの望むような額で買収してくれる相手は見つからないだろう。そういう事情もあり、今のような形はどうしても変えていく必要があった。
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