老紳士、姿をくらます。そして嘘だけが残った……。

15歳で起業した著者が超富裕層になるまでの15年を振り返る『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』特別掲載、第17回。営業部長といっしょに老紳士(会長)を問い詰めるべく、その行方を捜す正田青年。ついに捕えるも、老紳士の驚きの機転で、結局逃げられてしまいます。

会長の逃げ切り

 一方、僕と営業部長は、どうにか会長に接触して問い詰めようと考えていた。

 僕はそのときまでに2000万円以上のお金を会長に預けていた。会長とつきあいのあった周囲の人たちも、株のほかにベトナムかどこかでブラックタイガーの養殖事業があるなどと聞かされて、数百万円の出資をしていた。

 僕らは会長に電話をかけ続けた。だが、いくら電話をしても会長は応答しなかった。ところがある日、営業部長と一緒に都内を車で走っていると、偶然、路地から車に乗って出てくる会長を見つけたのだ。ここで逃がしてはいけないと思った僕たちは、車を路上に止め、運転席の会長に話しかけた。その際、こちらが彼を疑っているような素振りを見せることは一切しなかった。

 そんな僕たちの様子を見て安心したのか、会長は性懲りもなく新たな出資話を始めた。もはやそんなことはデタラメだとわかっていたが、僕たちは神妙にその話に耳を傾け、後日、さらに詳しい話を聞くために、別の場所で会うことにした。

 約束の日、すっぽかされることも十分に予想していたが、会長は時間どおりに待ち合わせ場所のファミレスにやってきた。

 飲み物を注文すると、僕たちはすぐに本題に切り込み、「お金を返してほしい」と詰め寄った。それを聞き、最初はのらりくらりとした態度でどうにかとぼけようとしていた会長だったが、それでもこちらが真剣な態度を崩さないでいると、最後は観念したかのような表情になって申し訳なさそうに話し始めた。

「いやあ、オレも悪いと思っているんだけど、知り合いが金を持ち逃げしてしまって、その負債が全部自分のところにのしかかってきちゃってさぁ。今本当につらい時期なんだ」

 そんなことを言われても、信じる気持ちなど微塵もなかった。

 お互い黙り込んでいると、会長がいきなり「うーっ」とうめき始めたのだった。さらに弱々しい声で、「持病の糖尿の発作が出たから、車にインシュリンを取りに行かせてくれ」と訴えてくる。

 そんな光景をそれまで一度も見たことのない僕たちは、大変なことになったとおたおたしてしまい、問い詰めていたことも忘れて「急いで車に行ってください!」と声をあげていた。会長はその言葉を聞くと、胸を押さえながら店から出て行った。その後、車に乗ったかと思うと、驚くほどの素早さで車を動かしどこかへと走り去ってしまった。

 僕たちは、その迫真の演技と展開の早さに、一瞬何が起きているのか把握できずにしばらくは呆然としたままだった。そしてこの日以来、僕たちは会長に一度もお目にかかれていない。

噓のカラクリ

 会長に逃げられてから、僕と営業部長は今後のことについて話し合った。彼の息子や娘に連絡し、すべてを話すことも考えた。しかし、彼らには罪はないし、責任を取ってもらうのも酷なように思えた。結局、僕たちは息子と娘に連絡をするのを控えることにした。

 その後、時間が経つにつれ、会長の噓が次々と明らかになっていった。

 まず、最初に会ったときに、あたかも格闘家と親密な関係にあるかのように振る舞っていた件だが、実際にはそういった関係ではなく、あのときが初対面だったことがわかった。

 このことは、たまたまあの場にいた人から聞くことができた。内輪のパーティーだったため、格闘家も会長のことをどこかの業界の〝偉い人〟だと思ったらしい。有名格闘家をしてそう思わせるだけの貫禄が、会長にはあったということだろう。

 それから、持ちビルとパスタ店の件だが、これも会長とはまったく関係のないことが判明した。

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15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと

正田圭

「僕は、どこにでもいるごく普通の子どもでした。両親はサラリーマンと専業主婦で、自分に特別な才能があったとも思えません」と語る著者、正田圭さん。そんな正田さんの「お金持ちになりたい!」という目覚めから、ついに超富裕層となった今日までの、...もっと読む

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