ネット広告の仕組み
ありがたいことに、SEO事業は成長を続け、それなりの収入を得られるようになってきた。
収益は、契約を結んだ時点でまずは45万円ほどの着手金をもらうことで安定させていった。もしも今、こんな金額の提案をしたら「ばかにしてんのかよ!」と言われるだろうが、そのころはまだかなりの額の着手金をもらうことができたのだ。
その後は成功報酬型のスタイルにシフトしていった。例えば、1カ月50万円でレーシックを宣伝したい眼科と契約を結んだとする。1カ月30日間のうち、レーシックというキーワード検索で、仮に15日の間1ページ目に表示されれば50万円の半分をもらえるという仕組みだった。もちろん、30日間ずっと1ページ目に表示されれば50万円を受け取ることができた。
稼ぐためには“売れ筋”のキーワードを扱うことが重要だった。いくら上位表示されても、クライアントの収益が向上しなければ解約されてしまうため、どこに営業をかけるべきか、クライアントの選定には力を入れていた。
時折、グーグルやヤフーが検索のロジックを変え、僕たちが開発した手法が機能しなくなることもあった。その一方で、ロジックが変わったおかげで、それまであまり検索に引っかかってこなかったものが急に1ページ目に浮上してくる場合もあった。いずれにせよ、幅広いキーワードを対象にして、たくさんの契約が取れれば収入が安定することから、顧客獲得には常に注力していた。
アプローチの仕方もそのころは結構単純で、検索すると2ページ目に出てくるような企業のホームページを開き、問い合わせフォームに「御社のサイトを検索サイトの上位に表示させませんか? 1ページ目に表示されるだけで、こんなにアクセス数が変わります」というメッセージをひたすら送るという作業を繰り返した。
当時は、オーバーチュア広告(キーワードを検索すると表示される有料広告)がまだ目新しかった時期でもあった。そこで、オーバーチュア広告を出している企業に電話をかけたり、メールを送ったりして、「一般の検索でも上位に表示されるようにしませんか?」という提案を行った。
オーバーチュア広告は、一般検索の結果とは違い、1キーワードごとの値段を完全入札方式のオークションで決定し、競り勝ったところが広告を表示できるというシステムになっていた。お金を払ってオーバーチュア広告を出している企業は、当然、一般検索でも上位に表示されたいと考えているはずで、そうした会社をターゲットにして営業をかけていたのだ。
東京進出
SEO事業をさらに発展させるために、ホームページ制作会社や印刷会社と業務提携をするようにもなった。ホームページの制作会社であれば、制作依頼をした企業からネット上での広告について相談を受けることもあるだろうと考えたのだ。実際にその考えは的中し、業務提携先の制作会社や印刷会社を経由してSEOの委託注文がたくさん入ってくるようになった。
僕らの会社はまだまだ知名度も低いので、形式としては制作会社が受注し、こちらが指定した料金に、制作会社が自分たちの取り分を上乗せして先方に請求するという方法をとった。
こうした方法を通じて、僕たちは自分たちで営業をせずに大口の顧客を確保することに成功するようになる。
あるとき、提携先の制作会社が、都内の某有名私立大学からの依頼でホームページを作っていたことがあった。そのつながりで、大学から仕事を頼まれることもあった。「新しいホームページを作るついでに、その大学がSEOを頼みたいって言ってるんだけど、できる?」
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