僕たちの会社の辞書に「営業」という文字はなかった。

15歳で起業した著者が超富裕層になるまでの15年を振り返る『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』特別掲載、第10回。SEO事業に乗り出した正田青年。将来的には会社を設立し、上場させて資産を増やそうと考えていましたが、仲間全員、肝心の「営業」が大の苦手だったのです。

営業マナーを知らない営業マン

 SEOのサービスを売り込むためには、SEO技術者やエンジニアを集める必要があるのだが、僕にはそのような技術はなかったし、プロを雇う金もなかった。そこで、学生のアフィリエイター仲間たちの中からアルバイトを募集した。適任者が2人ほど見つかると、彼らを雇ってSEOの事業をスタートさせたのである。

 いざSEOビジネスを始めると、将来的にはSEO事業の会社を設立し、上場したいとまで考えるようになった。非上場のうちに会社を大きくし、上場をすることによって資産を爆発的に増やそうという目論見だった。

 自分たちで構築したSEOのサービスを売るために、通販サイトを始めたAの父親の会社に話を持っていった。すると、驚くほど簡単に注文を取ることができた。これを皮切りに、サイトを作っては関連する企業などに売り込みをかけていった。

 だが、この営業活動がうまくいかなかった。僕らはとにかく若すぎたのだ。

 どうにかアポイントを取って相手先の企業に出向くのだが、社会人経験などまったくないため、名刺の交換の仕方さえわからない。そもそも、どんな格好をして行けばいいのか、携行するカバンはどんなものが適切かといったことも理解できていなかった。そんな状況だったので、パーティー用のデザイナーズスーツを着用し、先がやたらと尖った革靴を履いて出掛けていってしまうような〝イタさ〟だった。

 あるとき、こうしたいで立ちにヴィトンのバッグを抱えて営業に出向いたら、年配の担当者に「キミ、そんな格好をして営業をしちゃいけないよ」と注意されたことがあった。また、別の営業先では、「あなたね、ペンと手帳ぐらいはいつも持ってきなさいよ」と叱られたりもした。

 このほか、通された部屋で担当者を待っている間に、ポータブルゲームに熱中してしまって怒られたり、約束の時間に遅れて帰されたりしてしまったこともある。皺だらけになったスーツを着て営業に行き、先方の担当者から奇異の目で見られるということもあった。

 ビジネスを行う上での未熟な面が影響したこともあり、顧客の数はなかなか増えていかず、儲かっているという感覚は薄かった。サイト制作のためにかかる支払いも多く、お金がどんどん貯まっていくという状況ではなかった。

 この先、ビジネスを軌道に乗せていくためには、質の高いサテライトサイトを数多く作る必要があった。

 ただし、自分たちで作れる数は知れている。100以上のサイトを作るとなると、やはり外注するしか手段はない。IPアドレスを分散するためのサーバー代の費用も高額だった。そうなると、どうしても出費のほうも膨らんでいってしまうのだった。

 サーバー代、人件費などの固定費はビジネスが進めば進むほど増えていく。広告宣伝費もかけていた。だが、マナーをまったく知らない僕たちの営業力は限りなくゼロに近かったため、ビジネスの状況は芳しくなかった。そこで僕は、現役の営業マンを雇うことに決めた。

 さっそく名古屋の広告代理店に行き、求人広告を出すための相談をした。何度かやり取りをしているうちに、僕はその広告代理店の担当者を「できる営業マンだ」と思うようになった。彼が人生で最初に会った営業マンなのだから、どんな営業マンなのか僕には判断基準がないのだが、それでもピンとくる何かがあった。そこで僕は、無理を承知の上で「ウチで働きませんか?」と彼に声をかけてみた。

 誘われた本人は相当迷ったようだった。ヘッドハンティングされたと言えば聞こえはいいが、彼にしてみれば給料は下がるし、会社と呼べるのかもわからないような組織からの誘いだったのだ。しかも、彼は今勤めている会社で次期社長候補になっているらしかった。そして、社長が引退するという話も遠い未来の話ではなく、かなり現実的に話が進んでいるようだった。

 僕は断られることを十分覚悟していた。ところが彼は、僕からの申し出を受け入れて、一緒に働くことを選んでくれた。将来の可能性に賭けてくれたのだと思う。僕も若かったが、彼も24歳という若さだった。営業部員は誰もいなかったので、即座に営業部長に就任することになった。今思えば、彼自身、社会に出てからそんなに年月を重ねていたわけではなかったが、自分たちに比べたら一応社会のことをある程度知っていることは確かであり、そういう人が1人いるだけで心強い気持ちになれた。

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15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと

正田圭

「僕は、どこにでもいるごく普通の子どもでした。両親はサラリーマンと専業主婦で、自分に特別な才能があったとも思えません」と語る著者、正田圭さん。そんな正田さんの「お金持ちになりたい!」という目覚めから、ついに超富裕層となった今日までの、...もっと読む

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