海外逃亡を考える
当時はインターネットもなかったので、なんとか電話帳などでTシャツ製造器を作る会社を見つける必要があり、「Tシャツくん」という機械が吉祥寺のユザワヤで売られていることを知った。
これはシルクスクリーン(版画の版のようなもの)でTシャツにプリントするもので、これを2台購入した。そして、Tシャツくんの専用インクも大量に購入した。Tシャツそのものは、大学の先輩・中居さんが1枚200円で仕入れるルートを開拓してくれた。
元々1500円という価格ありきだったのだが、なんと、原価はTシャツ代の200円に加え、インク代が一人50円ほどである。シルクスクリーンは1枚1000円ほどなので、1クラス40人とした場合、一人25円である。つまり、1枚あたり275円。1500円で売れば1225円の利益が出る。
新入生歓迎委員の皆は各クラスでの説明会でTシャツが1500円であること(2色だと1600円)を伝えてくれ、「デザインを4月8日までにくれ」と依頼をした。体育祭は4月13日、私はその間に1200枚のTシャツを作ることを約束したのである。
8日までにデザインが30クラス分集まり、作業を開始した。この時、作業をした場所は今考えるととんでもないのだが、大学内の「合宿所」という施設を3棟借り切ったのである。大学当局に申請をし、4日間Tシャツを作るので貸してください、と言ったところ、知り合いの職員だったため「面白いことするね!」とすぐに許可を出してくれたのだ。
そして、4月9日の朝から作業が開始した。この時、一人でできるわけもないので、田中、井田、大橋、神谷、尾形、エビちゃん、中居さん、杉山、三浦、そして私の姉にバイトを頼んだ。1時間3000円を出すという条件にしたのである。
当初はシルクスクリーンの扱いがまったくうまくいかず、何枚も捨て、失敗を重ねた。初日はなんと2クラス分しかできなかった。2日目も3クラス分しかできなかった。私自身は合宿所に泊りこんでいたのだが、このペースでいけば4月13日の体育祭に間に合わないことは明白だった。
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