高橋源一郎「歴史と現代を往還する」

【第5回】1人目は高橋源一郎さんのご登場です。ご自身の代表作3点として挙げたのは、『さようなら、ギャングたち』(1981)、『日本文学盛衰史』(2002)、『さよならクリストファー・ロビン』(2012)。7年間のスランプの後、久しぶりに自分のなかの音楽が聞こえてきます。『日本文学盛衰史』という、近代日本文学そのものをテーマにした長編はどうやって生まれたのか? (聞き手・武田将明)


歴史と現代を往還する『日本文学盛衰史』

武田将明(以下、武田) ということで、『日本文学盛衰史』に移ります。いままでのお話から推察すると、日本の文学、特に小説への関心を当初はそれほど持っておられなかったのではないかと思います。

もちろん『ジョン・レノン対火星人』に出てくる「金子光晴」とか、『ゴーストバスターズ』のBA‐SHOとか、日本文学のキャラクターは高橋作品に登場してきましたし、『文学がこんなにわかっていいかしら』などの評論では、同時代の日本の作家を論じてはいます。

ですが、この『日本文学盛衰史』のように、近代日本文学そのものをテーマにした長編を書くには、何か高橋さんの関心を特に近代日本文学へと引き寄せるきっかけがあったように思うのですが、いかがでしょうか。

『日本文学盛衰史』(講談社、2001年/講談社文庫、04年)

高橋源一郎(以下、高橋) そうですね。一つ誤解を避けるために言うと、読んではいたんですね。僕は今年64歳になりますけれども、たぶん僕のもう少し後の世代までは、ある種の教養主義みたいなものがあって、やっぱり文学を好きだったら、大岡昇平を読んでなきゃまずいよねとか、椎名林檎じゃなくて、椎名麟三はコンプリートとかね。そういうふうに何か読んではいたんです。

ただ、あまり身にしみてなかったんですね。島尾敏雄が好きとか、個別には好きな作家もあったんですけど、本当に身にしみるようになったのは実は最近なんです。そういう意味では、この『日本文学盛衰史』が、日本文学と本当にまじめにつき合おうと思ったきっかけになった。

その前に関川夏央さんと谷口ジローさんの『『坊ちゃん』の時代』という漫画があって、これを80年代の終わりぐらいに読んだんです。本当に衝撃受けて。僕は伊藤整の『日本文壇史』は読んでいて、それを面白いなと思ったんだけど、この『『坊ちゃん』の時代』は心の底から「やられた」と思った。もうあれ、ご存じのように漫画という形で、伊藤整の『日本文壇史』を漫画でリメイクしているんです。

まず、登場人物が作家たちであること。それから、もう一つ大きい仕掛けがあるんですね。登場している作家たちの小説に書かれていることを全部、事実だっていうふうにしたんですね。そこの発明がすごい。

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高橋 源一郎,古井 由吉,瀬戸内 寂聴,平野 啓一郎,飯田橋文学会
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2017-11-11

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