お店やホテル、レストラン、銀行等々、入り口に足を踏み入れるやいなや、「いらっしゃいませ」と、よく声をかけられます。
無機質なトーンで言われることもあれば、満面の笑みでそう言われることもあります。ですが、どのような場合であったとしても、「はい、いらっしゃいましたよ」などとそれに答える人はいません。
多くの方は、とくに何も考えずに、黙って店内へ入って行くのではないでしょうか。
考えてみると、どこでも聞かれるこの当たり前の「いらっしゃいませ」という言葉には、返す言葉がないということに気付かされます。
つまり、サービスをする側は「いらっしゃいませ」と言ってお迎えをしているつもりでも、それに対して、きちんと対応できる言葉がないわけです。ちょっとキツイ言い方をしてしまうと、この「いらっしゃいませ」という言葉は、ある意味、会話拒否の言葉とも言えるかもしれません。
そんなバカな、と思われるかもしれませんが、実際に自分が、いろいろなところで「いらっしゃいませ」という言葉をかけられたときに、何と答えるべきなのかと、あらためて考えてみてはどうでしょう。
あなたが「いらっしゃいませ」という言葉をかける立場にいるとしたならば、かけられた相手は、それをどう受けとめているのか、ちょっと考えてみてください。もしかしたら、まったくこちらの存在には気付いていないかもしれません。
サービスとは言いながら、そのじつ、何ら相手の心を動かすもの、つまり、感動というものが見当たらないわけです。
では、そのようなときに、気持ちの良い笑顔と声で「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」「お元気ですか」と、そんな挨拶があったとしたならどうでしょう?
言われた側も思わず、それに答えたくなるのではないでしょうか。あるいは、言葉には出さなくても、そちらを向いて笑顔で会釈をしたくなるかもしれません。
「いらっしゃいませ」を言ってはいけないということではありません。
そのあとに一言、「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」等々、そういう一言を添えてみる。それにより、相手の心にあともうちょっとだけ近づける、そういうことができるということをぜひ知っていてほしいのです。
言葉を大切に使う
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