男性には理解できない、女性用のアレのCM

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴ります。

第1回目は「尿もれパッド」についてのお話です。

はじめまして。作家の森美樹です。

「男と女の性を理解できなければ作家になれないぞ」と、師匠(男性作家)に諭されたのは22歳の頃。その3年後に作家デビューしたものの、「性を理解する」の意味はわからず仕舞いでした。しかしなぜか性的なご縁は向こうからやってきて、20代前半に緊縛モデル、30代後半にメールレディのトップに君臨するなど、地味ながら裏街道を歩くはめに。やがて女装家と結婚するにいたると、生活はさらにてんやわんや。47歳になった今では、人間でいる限り性への疑問はついてまわると半ば諦めモードに突入しました。

この連載では、私が見聞きした性や性に付随する女性のありようを綴っていきたいと思っています。

性とひとことに申しましても、人類の数だけ趣味嗜好があるのです。行為だけにスポットを当てるのは、性を愚弄しているのと同じこと。

さて、第1回目は、尿もれパッドについてのお話です。

尿もれパッドが市民権を得たのは、いつ頃だろうか。何かが「もれる」というのは、淫靡なイメージだ。秘密がもれる、ため息がもれる等々。

私は以前「尿もれ座談会」に参加したことがある。尿もれパッドを開発している某メーカーが、品質改善のために行った座談会だ。昼下がりの明るく清潔な会議室だった。淫靡な雰囲気の欠片もなく、各年代の女性達が明るく尿もれについて語るのである。

実は私も、数年前に一度だけ尿もれを経験した。自律神経の乱れからくる突発的な症状だったが、いつ「尿の暴走」がくるかわからない状態に怯え、泌尿器科クリニックのドアを叩こうかと本気で悩んだ直後に、嘘みたいに治ってしまった。察するに原因は過度のストレスである。

で、「尿もれ座談会」だが、下は20代、上は40代の気品と美貌を兼ね備えた女性達が「今夜のメニューはビーフシチューなの。おたくは」みたいなカジュアルさで「私は20CC用の尿もれパッドを使っているの。あなたは」とざっくばらんに話している。その場を取り繕うように愛想笑いを浮かべていた私だが、内心危機感を覚えていた。ちなみにその頃には私の尿もれは完治しており、いわゆる現役ではなかった。

飯島直子がCMに起用されてから危機感が爆発

世間に尿もれパッドが登場した時は、まだ秘密裏に使用していたはずだ。淫靡とは異なる隠し事である。テレビCMでもダイレクトに「尿もれ」とは言わず、中年女性がクシャミした後に「あ!」とつぶやき、慌ててトイレに走る、とか、生理用品と見紛うようなアプローチだった。男性視聴者にはすぐには何のCMか理解できなかっただろう。

やがて「あ!」が「ちょぴもれ」になり、ついには「尿もれ」という最終形になるまで、さほど年月は要さなかったと記憶している。

しかし、飯島直子がCMタレントに起用されてから、私の中の危機感は爆発した。確かに飯島直子も中年と言えば中年、だが水も滴る美熟女である。尿が滴る美熟女ではないだろう。冗談言っている場合ではなく、飯島直子といえばアナタ、バブル期~最近までセクシータレントとして名を馳せていた。セクシーと尿もれって対極にあるし、ともに淫靡だと言われればそれまでだけど、否が応でも「飯島直子も尿もれするんだ」と、あれこれ想像してしまう。

さらに昨今では小池栄子がCMに起用された。これは何を意味するのか。尿もれ世代の低年齢化を示唆しているのである。

「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」と同じように「尿がもれるならパッドで吸収すればいいじゃない」という安易な考えでは、身体だって「脱尿もれ革命」に向かって奮起する力を失ってしまうよ。

おそろしい骨盤底筋群の低下

尿もれも原因は様々で、私のように自律神経の乱れがきっかけだったり、巨大化した子宮筋腫が膀胱を圧迫している場合もある。出産後に経験する女性もいるかもしれない。

とはいえ無視できないのが、骨盤底筋群の低下である。

「骨盤底筋群を鍛えると膣の締まりが良くなる」とまことしやかにささやかれているけれど、膣=セックスうんぬんよりはまず尿だ。意中の彼とセックスに持ち込んだのはいいが「尿もれパッドを取るの忘れた」なんてベッドで服を脱がせにかかる彼を恥じらう素振りで押しのけたりして。衝動や勢いもセックスのスパイスだから、できれば避けたい一手間である。

尿もれパッドのように、いつとはなしに生活に定着したものがあれば、なりをひそめてしまうものや習慣がある。例えば、和式トイレ、雑巾がけ、などだ。他にもあるが、あえて骨盤底筋群に特化してみた。和式トイレや雑巾がけ、田植えや畑仕事が日常に組み込まれていた昔の人は、知らず知らずに筋力をつけていたのである。今や洋式トイレやロボット掃除機が蔓延し、和式トイレはごくたまに駅で利用する人が大半だろう。私も然りだが、わずかな時間でも和式トイレってけっこう疲れるのだ。ちなみにこれもあたりまえになったウォシュレット。多用しすぎると「甘えた肛門」になるのだとか。甘えた肛門。響きは可愛いけれど、肛門の感度が鈍るのも困ってしまう(いやらしい意味ではなくね)。

いかに自分を労るかが大事

私は医療従事者ではないので偉そうな御託を並べるつもりはない。ただ、身体に備わった機能を劣化させてしまうのはしのびないな、と歯がゆくなるだけである。特に若い人にはスクワットなどで下半身を鍛えてほしい。代謝も良くなるし、必然的に膣もしまるとしたら、良いこと尽くしだからだ。

でも、危機感が爆発した反面、新たな発見が生れたのも事実。それは文字通り、尿もれがカジュアルになったこと。恥ずかしいと思い込むと、ますますストレスになってしまう。だったら、お仲間がいる安心感にシフトチェンジしたほうがいい。

「あなた20CC?」「私は50CCよ」、という具合に、調味料の話じゃないの、もっと大切な話よ、ってね。

時代によって私達の身体も、とりまく環境も変わっていく。大事なのは、いかに自分を労わるかだろう。

そうは言いつつ、アラフィフの私でも引き締める部分は引き締めておきたい。お財布の紐と骨盤底筋群。怠け心に活を入れ、「尿の暴走」に備えている。経験者だからわかるのだけど、これって本当に困るのよ。

秘密と尿は、できればもらさないでおきたいのだ。

この連載について

アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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