疑心暗鬼

東京

失踪したター坊こと、カンニングの竹山は
意識的に標準語を使い、すっかり東京の芸人になっていた。
そして初めて見る東京のお笑いライブに、
僕らは福岡との違いばかりを見つけてしまうのだった。

「そっちは順調らしいね?」

 イベントの打ち上げ終わり。東京は中野の狭すぎるアパートの一室で、2年ぶりに向かい合ったター坊ことカンニングの竹山は、思っていた以上に元気だった。

「う、うん。でも東京のイベントって、いつもあげなことすると?」

「割と多いかな。俺も最初はびっくりしたよ」

 一観客としてカンニングが出演するイベントを客席から見ていたこの日の僕は、
最初から最後まで、目に入ってくる光景が不思議で不思議でたまらなかった。

 会場となった深川座は客席が畳敷きで、その造りは博多温泉劇場を彷彿とさせた。
カンニングはトップバッターだったから、意図的に目を伏せると、
ター坊・ケン坊が博多温泉劇場のトップを務める光景が瞬時に甦ってくる。

 しかし、ここは東京なのだ。

 ほぼ満員の客席を埋めているのは東京の人であり、カンニングの後に次々と出て来たのも、標準語の漫才やコントを披露する、見慣れない東京の若手芸人だった。
その中にはテレビで見たことがある笑組さんやホンジャマカさんも混じっていたから、客席の僕は終始、どこか遠い国に来ているような錯覚に陥っていた。

「すぐに打ち上げがあるから、そこで合流しようよ。終わったら外で待ってて!」

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疑心暗鬼

博多大吉

「どうして芸人になろうと思ったんですか?」一番多く投げかけられたこの質問に、いつも心の中で聞き返す。「どうしてみんな、芸人になろうと思わなかったんですか?」ーー時はバブルまっただ中。福岡の片隅で、時代の高揚感に背中を押された少年が抱い...もっと読む

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コメント

Hug3brosmom こちら、ただいま無料だそうです。しみじみしながら読んでいます。 約2年前 replyretweetfavorite

susie113 久しぶりに更新された 竹山さん側からの話も聞いてみたい⇒  約2年前 replyretweetfavorite

3_shinpaisyo 行間から伝わる、先生たちと竹山さんとの間に流れるヒリヒリとした空気。 そしていま先生と竹山さんが 約2年前 replyretweetfavorite