自分が役立たずなんかじゃないと証明したかった

【第12回】
なんて役立たずなんだ、と思っていた自分の超能力で、誰かを助けられるかもしれない。
今村は、陶芸家・津田に力を貸すことにしたが――。
小説すばる新人賞作家・行成薫が描く、先読み不能の「超能力」エンターテインメント!


 極度に集中したせいか、ひどく頭が痛い。糸を引きちぎるために、力を使い過ぎたのだろう。本来ならもう少し動かせるはずなのに、全身から力が抜けきってしまった。要するに、失敗したのだ。

「今村さん、皿はまだ落ちておりません」

 津田が、今にも泣きだしそうなほど顔を赤らめ、ぶるぶると拳を震わせていた。今日はもう、力が使えない。だが、日を置いたら、きっと今まで以上にしっかりと皿は固定されてしまうだろう。そうなったら、お手上げだ。

「やめ、ましょう、津田さん」

「やめる?」

「皿を割っても、過去は、消えないと思うんです」

「しかし」

 心の中で申し訳ない、と思いながら、今村は何とかごまかそうと必死になった。自分の恥を葬ることができると前のめりになっていた津田は、引くに引けない状況になっている。皿を割ることは事実上無理だ、などと、本当のことを言えるはずがない。

「僕、昔サッカー部だったんですけど」

「はあ」

「なんかもう、ほんとに負けるのが嫌いで。でも、周りは結構サッカー楽しもうよ、みたいな人たちばかりで。練習とか、ちんたらやってるんですよ。僕一人だけ必死って感じで。チームが弱いのは、周りが悪いんだって思ってました」

 津田は、唐突に始まった今村の話を理解しようとしているのか、開きかけた口を閉じて、耳を傾けた。

「でも、最後の大会までずっと、僕は全然点が取れなかったんです。最後の試合でも、後半で出て、惜しいシュートが一本あったんですけど。でも、ほんのちょっと外れて、ポストに当たっちゃって。たぶん、あと、右に十センチくらいズレてたら、入ってたんですよ」

「右に、十センチですか」

「そうなんです。ずっと、後悔してきたんです。毎日毎日。あの時に、ゴールを決めていたら人生変わったかもしれないって。右に十センチ、右に十センチ、ってずっと。もしかしたら、そうやって思い続けたせいで、こんな力が備わったのかもしれない」

「思いの強さ故(ゆえ)、ということでしょうか」

「僕の能力って、役に立たないんですよ、全然。もしかしたらね、もっとすごい力が身についてたかもしれないんですけど、右に十センチ、ってばっかり思ってたから、右に十センチしか物が動かせなくなったのかもしれない」

 何か、言うことをまとめなければいけないのに、胸が熱くなって、いつの間にか涙が出ていた。右に十センチ、に縛られてきた自分が、急に情けなくなったのだ。

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行成薫

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