菅沙絵
人生は自分が「信じられるもの」を探す旅
サワディ茶話会の参加者、湊エリカの百鳥悠次郎との思い出は、調布のスナック「優香」を舞台にした恋物語。80年代、東京郊外、誰しも夢を持っていたあの時代、百鳥悠次郎は湊エリカの心に大きな痕跡を残した。
「でもね、私の部屋には悠次郎さんは来たことあるわよ。……なんども」
不敵な笑みを浮かべる湊エリカは、自分と百鳥悠次郎との思い出を話し始めた。
湊エリカは東京の外れ、町田市で生まれ育った。地図の上で東京都から出っ張りのように飛び出た町田市は、東京とも言えないし、どこか中途半端な都会だった。 幼い頃から周囲は、少々乱暴な空気が支配していて、地元の公立校に通っていた湊エリカがその空気に影響されるのは当然の流れだった。 中学に入った頃には、親ともろくに口を聞かず、いつも外を遊び歩いていた。同級生がどこからか手に入れた原付バイクの後ろに乗って、16号線を走り回ることが無上の喜びだった。
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この連載について
菅沙絵
友人たちが彼女につけたあだ名は「レジェンド・ユウカ」。結婚市場に残された最後の掘り出し物という意味だと説明されたが、たぶん揶揄する意味もある。妥協を知らない彼女が最後にどんな男と結婚をするのか、既婚の友人たちは全員興味深げにユウカさん...もっと読む
著者プロフィール
神奈川県座間市出身。実践女子短期大学卒業後、20歳で大手メーカーへ一般職として就職。20代の頃より小説の投稿を続け、3年前より本サイト「cakes」にて連載を始める。その後、自身初の書籍化。
現在は、自分に正直に生きているだけなのに結婚できないOL百鳥ユウカを主人公にした小説「結婚できない2.0〜百鳥ユウカの婚活日記〜」をcakesにて連載中。