科学が教える、子育て成功への道

成功は「ハードスキル」ではなく「ソフトスキル」がもたらす?

親が子育て成功のカギとみなしているのが「ハードスキル」。ビジネス界が強く求めているのは「ソフトスキル」に秀でた人。「ハードスキル」と「ソフトスキル」を理解すれば、子育て成功への道は拓けてくる?

人生の成功を決めるのは「ハードスキル」より「ソフトスキル」?

「ハードスキル」の成果は時系列に沿って目で見て解りやすく、テストによって簡単に測定可能だ。学校の成績表で評価される、数学、読解、キーボードタイピングといった教科は「ハードスキル」である。職場では、コンピュータプログラミングや機械の操作、科学をする上での特定の測定スキルなどが「ハードスキル」に当たる。

「ソフトスキル」と呼ばれるスキルには、コラボレーション、感情の調整(例:会議が自分の思い通りに進まなくても、カッとなったりしない)、実行機能等が含まれる。実行機能とは柔軟に思考し、厄介な問題を解決するために、ただ同じやり方を漠然と繰り返すのではなく、別の方法を探そうとするスキルである。あなたの部屋の隣で子供が大音量の音楽を流していても、家計の収支計算に集中できるのも、実行機能の働きによる。こうしたスキルは、弁護士、医者のような専門家に限らず、どんな職業の人でも使っている。

「ソフトスキル」を測定することはとても難しいが、ビジネス界や社会科学者の努力により大幅に研究は進歩している。その結果、対人関係や社会的な洞察の役割についての理解が進み、子供、大人にかかわらず、「ハードスキル」よりも「ソフトスキル」の方が、学業での成功を予測する上で役立つことが判ってきた。「ソフトスキル」は「ソフト」ではなく「しっかりした」スキルなのである。

ビジネスリーダー達の声 これからの子供が成功するために必要なことと教育内容とのズレ

情報を適切に選べる人は、技術的な問題を解決するために考え得る方法を、思いつく限り出そうとする。そのうえで、間違った方向に進んだら修正し、瓦礫のような知の山の中から金を掘り当てる方法を知っているのだ。まるで思考のGPS機能を搭載しているかのように。

ビジネスリーダーや教育者達は、二一世紀のグローバルな世界で子供が成功するために必要なことと、実際に教えられている内容とが、未だに全く合っていないと言っている。ビジネスで必要な人材は深く考え、問題を解決しようとする人であり、事実の断片を覚えている人ではない。科学者、学者、弁護士、更にサービス業からヘルスケアの仕事まで、どんな仕事に携わる人々にとっても、ただ事実を知るのではなく、事実を解釈し、新しい組み合わせを思いつくことが求められる。

二〇一三年、雑誌『フォーブス』は大卒者が職場で成功するために必要なスキルについて取り上げた。そこに掲載された、全国大学・企業連合の調査で上位に挙がったスキルはチームで働く能力、決断力、問題を解決する能力だった。

二一世紀スキルの中味を明らかにする

OECDによる二〇一五年のレポートでは、子供達が成功するために必要なスキルについて取り上げ、中でも、「ソフトスキル」の重要性を強調した。「社会的で情動的なスキルは、それだけで機能するわけではなく、認知的スキル等異なるスキルと連動して働く。更に子供の後の人生において良い成果を上げる可能性を高めることも解っている」。

ここまで述べた構想全てに共通しているのは、ハードスキルを身につけるだけでは成功の道を歩めないとしているところだ。これからの子供は「ソフトスキル」も身につけなければならない。人の才能の伸ばし方を研究しているドロシー・ダルトンは、うまい言い方をしている。「ハードスキルは成功する人生の土台だが、ソフトスキルというセメントがなければ成功は確かなものにはならない」。

6Csを活用して、ハードスキルとソフトスキルを絶妙に融合する

私達の提示するモデルは、ここまで何度か紹介してきた6Cs~コラボレーション、コミュニケーション、コンテンツ、クリティカルシンキング、クリエイティブイノベーション、コンフィデンス~である。

6Csは以下の点でこれまでのモデルと違う。一つ目の違いは、私達のモデルが子供の発達についての研究に基づいた何十年にもわたる学習科学の成果から生まれたこと。こうした研究のおかげで、沢山リストアップされたスキルの中から、カギとなる相互に関連するスキルを選ぶことができた。こうして選ばれたスキルは、何度も同じプロセスを繰り返して洗練され、あるスキルが別のスキルの成長を助け、お互い関わり合いながら発達する。二つ目は6Csは学ぶことで伸ばすことができる能力であること。誰もが夫々のスキルにおいて、より進んだレベルに成長できる。但し一旦ある領域で最高レベルに到達したとしても、全ての領域で通用するわけではない。これらのスキルは性格的な特徴ではなく、一旦最高レベルに到達したらもう安泰というわけでもない。三つ目は、私達がこれらのスキルを教師や親ではなく、学習者に焦点を置いて考えたこと。従って、何を学ぶかだけでなく、子供がどのような方法を用い、どのようなプロセスを通じて学ぶかを重視している。四つ目は全てのスキルを様々な文脈で用いることができること。子供が学校で過ごすのは全生活時間の二〇%に過ぎない。従って、学校「内」だけでなく、家庭や地域も含めた学校「外」の学びの場を作る必要がある。6Csを用いれば、いつでも、どこでも、誰とでも学びの場を作ることができるのである。

広い視野でこれからの「成功」を捉えよう!

私達は、学習科学の研究で得られた知見や二一世紀スキルとしてリストアップされた多くの項目を検討した結果、健康で生産的な人生を送る子供を育てるためには、子供自らが動いて、自然にスキルを繫げ、成長させてゆく方法をとるのが良いという結論に達した。このモデルはオリジナルなものではなく、過去一〇年の間に世間に広まった多くのテーマを取り入れてできたと言える。しかしこれらのスキルを学校外の文脈で育むために家庭や地域を学びの場にしようと考えているところが、これまでにない新しい視点だ。幸せで生産的な子供を育てるにはハードスキル以外のことも学ばせなければならない。私達が選んだ「C」は子供が個人としても職業人としても豊かに生きてゆくために必要なツールであり、子供が生涯をかけて、ずっと磨き、伸ばし続けるツールである。

最近『アメリカ公衆衛生ジャーナル』で公表された研究は、「ソフトスキル」の重要性を明らかにした。研究者は、七五三名の子供を、幼稚園から二五歳になるまで二〇年間追跡調査した。その結果、子供の二〇年後の成功を予測する上でカギになる要因が判った。その要因とはやはり知能指数(IQ)か? それとも家庭の社会経済的地位か? 実はそのどちらでもない。幼稚園の時、社会的に有能で、物を分け与えることができ、他者と協力し助けることができる子が、そうでないない子に比べて、高学歴で、高収入の仕事に就いていたのである。統計的な精査により、この結果には人種も性別も影響しないということも判った。

幼稚園時点での社会的スキルから、子供の人生の「成功」と大人になってからの仕事を予測できてしまうなら、私達の教育のあり方も考え直す必要があるだろう。学校でも、家庭でも、お勉強の成績やテストの点数だけにこだわらない、子供の幸せや成功をもっと広い視野で、全体的に捉えるように変わっていかなければならないのだ。


科学が教える、子育て成功への道

ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ
扶桑社
2017-08-19

この連載について

初回を読む
科学が教える、子育て成功への道

ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ /キャシー・ハーシュ=パセック

私たちは勉強ができれば「成功」、お金があれば「幸せ」と決めつけたり、反対に、頭の悪いから「成功」は無理、安楽に生きられれば「幸せ」と思い込んだりしていないでしょうか? しかしそれは、きわめて一面的な「成功」と「幸せ」の定義です。もっと...もっと読む

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コメント

RieDorji [健康で生産的な人生を送る子供を育てるためには、子供自らが動いて、自然にスキルを繫げ、成長させてゆく方法] 約9時間前 replyretweetfavorite

kosukeself 子供達が、自らの可能性を存分に発揮して、知的かつ社会的に生き、人生で成功する道とは? #SmartNews ある程度わかりやすかった。書籍化してるんかな。 https://t.co/oNOJ3M1TdR 4日前 replyretweetfavorite

hiro_practice 鍛えて力が強くなっても 怒ってビール瓶で殴るのはダメ🙅 4日前 replyretweetfavorite