部屋とアメコミTシャツと、わたし。
−その視線に惑わされて−

【第28回】Tシャツブームの真っ只中、ぼくの心を一瞬さらっていったのは、一枚のTシャツじゃなく、バービー人形を片手にした女の子だった——。彼女はなぜ、そこにいたのか? いまだにナゾな、ある日の出来事です。

空前のアメコミTシャツブームがきていて、買い集めている。やっぱりマーベルが好きだから、スパイダーマン、キャプテンアメリカ、などなど。集めだすと切りがないがこつこつと。

先日のこと、ベランダに干していたはずの一枚が見当たらなかった。どの一枚が見当たらないのか、たくさんあるなかの一枚だからわからなかったが、でもどうやら一枚足りないらしかった。しかしもう部屋を出なくちゃいけない時間で、探すこともできずにどこか気持ちが悪いまま。アパートを出ると。目のまえの植木の枝にハンガーにかかったままのマイティ・ソーのTシャツが掛けられているではないか!

あ、あれは……! ぼくの、マイティ・ソーだ! Tシャツの真ん中にプリントされているソーが、ぼくを睨んでいる。ご、ごめんよ……ソー……。そういや、昨夜は風が強かったね……。

ぼくはTシャツを手に取り、そしてそれを抱きしめようとした。そのときだった。となりに、小学校低学年くらいの女子がいることに気がついた。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

又吉直樹さん絶賛!!

おんなのこはもりのなか

藤田貴大
マガジンハウス
2017-04-13

この連載について

初回を読む
おんなのこはもりのなか

藤田貴大

演劇界のみならず、さまざまなカルチャーシーンで注目を集める演劇作家・藤田貴大が、“おんなのこ”を追いかけて、悶々とする20代までの日常をお蔵出し!「これ、(書いて)大丈夫なんですか?」という女子がいる一方で、「透きとおった変態性と切な...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません