4 神田達也
俺が今までにもらった数百、いや、数千を超えるであろう名刺の中からピックアップした何枚かの名刺があいつの手元にあった。そして、その名刺を俺にくれたという人物が五人、俺の前に立っていた。
名刺。俺が全然番組を当てることができなかった時とヒットしたあと、名刺をもらう数は三倍以上に増えた。そんなもんだよね。力を得た者に人は寄ってくる。名刺の数がそれを一番物語る。
名刺をもらった人とまた会うことは当然あるよ。でも、向こうは覚えていてもこっちが覚えていない時もある。名刺を渡す人と渡される人、そのパワーバランスは決してイコールじゃないでしょ? 名刺を渡す瞬間って、どちらかが名前を覚えてほしい人になるわけでしょ。
番組がヒットする前は俺も覚えてほしい人側だったけど、当たってからは変わった。変われたって言った方が本当はいいと思うけどね。
覚えられる側に変われた俺の前には、三人の男と二人の女が真っ白な揃いのパジャマを着て立っていた。その五人に俺がもらった名刺を返す。それだけ。名刺をくれた人にその人の名刺を返すだけ。だけど、一度でも失敗すればあいつがリモコンを押して、和也の頭が首から吹き飛んでいく。それが俺が挑戦しなければならない、クイズThe Name。
悔しいと思うこと自体が悔しいけど、この企画には「クイズ」×「息子の命」×「もらったけど覚えてない名刺」。三つの掛け算、入ってたんだよ。あいつは当然のことを尋ねるように聞いてきたんだ。
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