私は初めて、SMAPがあんなに泣いているのを見た。

28年間のSMAPの活動とその思いを、数々の言動から振り返り、幼少期から三十代に至るまでのファンの女性の28年の歴史と共に纏めあげ、「アイドルとは、ファンとは何か」を問い直すアイドルとファンのノンフィクション書籍『SMAPと、とあるファンの物語』。本書を公開する連載、25回目。SMAPデビュー10周年ツアーは、稲垣不在のまま札幌ドームで最終公演を迎える。そして終始客席を楽しませてくれたメンバーのラスト挨拶――。

 東京都内の駐車禁止区域に乗用車を止めていた稲垣は、駐車違反を取り締まろうとしていた警察官数名が周囲にいたにもかかわらず車を発進させ、そのうち1名に車が接触、警察官は右ひざに軽傷を負う。

 このことにより20時45分、稲垣は公務執行妨害と道路交通法違反の疑いで現行犯逮捕される。

 後に警察官が全治5日の打撲と判明したため、傷害容疑も加えられる形で、身柄は東京地検へと送検された。

 稲垣以外の四人のメンバーと関係者が都内のホテルに集合したのは日付が変わって名古屋公演の当日となった、8月25日の午前1時頃である。

 この少し前、中居は木村に電話をかけている。その時点ではまだ、コンサートをやるかどうかは決まっていなかったのだという。

「マネージャーはマネージャーで、やっぱどうするかわかんないじゃんか? とりあえず俺と木村が話し合わなきゃいけないなーって思ってた」(中居)

 このツアーにアドバイザーとして携わっていた放送作家の鈴木おさむが連絡を受けたのは、おそらくメンバー間で行われたこの話し合いを経た上でのことである。

「コンサートを結局やることになるっぽい」

 やるのであれば、何もかもを一から変えなくてはならない。

 さっそく都内のホテルではメンバーと関係者による緊急ミーティングが始まるが、焦りとともに、集まった鈴木たちにはずっと気になっていたことがあった。

 集合時間はとっくに過ぎているのに、中居だけがなぜか一向に姿を見せないのだ。

「皆ソワソワしてて、何してんだろうって思うじゃないですか」

 結局中居がホテルに顔を出したのは、皆が集合してから1時間半ほど過ぎた頃である。

 しかし挨拶もそこそこに次に中居が取った行動こそ、鈴木を驚かせた。

「いきなり紙を配りだして『とりあえず、俺、ライブの構成全部考え直してきたから』」

「『考え直してきたから何か意見があったら言って』って、その遅れていたと思ってた1時間半で、4人の歌割り、トークもここ削ってっていうのを全部作ってきてた」

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SMAPの28年間の活動と、とあるファンの女性の28年間。決して交わることはなかった。でも、支えられていた。そんな両者の紆余曲折の歩みから見えてくる、アイドルの“意味”。アイドル文化が生み落とした新世代の書き手によるSMAPとそのファンのノンフィクション。

この連載について

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SMAPとそのファンの物語—あの頃の未来に私たちは立ってはいないけど

小娘(乗田綾子)

転校を繰り返し、不登校にもなってしまった。思い焦がれた上京は、失敗した。願ったとおりの現実を生きるのは、難しい。だけど――。小学校低学年から30歳に至るまで、とある女性の人生にずっと寄り添っていたのは、親でも彼氏でもなくアイドルだった...もっと読む

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drifter_2181 ちなみにここ2回の主題である稲垣さんの事件について、日曜までは1つ前の「 も無料公開中なので、前回未読の方は2つまとめて読むのがオススメです。 #cakes 8日前 replyretweetfavorite

nkimshr0818 |小娘(乗田綾子) @drifter_2181 "SMAPのコンサートはその日、ちゃんとSMAPの作品として成立していた"この間の #ホンネテレビ と通ずるところがあるなあ。 https://t.co/SodzAWVEHp 12日前 replyretweetfavorite