人生は「スーパーマリオブラザーズ」と同じである。【最終回】

よいか。マリオには、いろいろな敵が出てくるじゃろう。強敵、山に谷に海に意地の悪い仕掛け。攻略には努力と根気が必要じゃ。しかし仮に、中身が「敵も出ず山も谷もないステージ」になったら、おまえはそれを楽しいと思うか?書籍『(推定3000歳の)ゾンビの哲学に救われた僕(底辺)は、クソッタレな世界をもう一度、生きることにした。』より特別連載。2018「紀伊國屋じんぶん大賞」エントリー中!

ゾンビ先生とエリ先生の哲学授業 第1回「ニーチェと永遠回帰」—後編

先生 ひろよ。時は前にしか進まず、「過去」などというものはもはやどこにもない。時がひろを乗せて前進するなら、おまえは後ろを向いてはいかんのじゃ。走る車を、後ろを向いては運転できんようにな。よそ見をしてはいかん。視線は常に、進行方向じゃ。

ひろ よそ見……。よそ見をしてたら、事故を起こしちゃいますね……

先生 うむ。いつだって、「今」がスタート地点なのじゃよ。もう世界のどこを探しても、「ゾンビにならなかったひろ」は存在しないのじゃから。ならば今を受け入れ、今から始まる未来をどう肯定的に過ごしていくか、その方向にしか道はないのじゃ。

ひろ はあぁぁぁ。理屈では、わかるんだけど。そんなこと僕に、できるのかなぁ。

先生 できるとも。誰だって、どんなハンデを抱えた者だって、超人になれるのじゃ。おまえはゲームが得意じゃろう? わしからひろに、この言葉を贈ろう。わしが樹海に籠もりながら、日本人のために考えた格言じゃ。「人生は、スーパーマリオブラザーズ」、じゃよ。

ひろ 出たっ。古代人らしからぬゾンビ先生の例え話! その心は?

先生 よいか。マリオのゲームには、いろいろな敵が出てくるじゃろう。強敵や気味の悪い敵、山に谷に海に意地の悪い仕掛け。プレイヤーは幾多の難関を超えて、お姫様を助けにいかねばならん。攻略には努力と根気が必要じゃ。……しかし仮に、攻略を容易にするために中身がすべて「敵も出ず山も谷もないステージ」になったら、それは喜ばしいことか? ただまっすぐ進むだけですぐにお姫様を助けられたら、おまえはそれを楽しいと思うか?

ひろ 楽しいわけないでしょ!! そんな簡単にピーチ姫を助けられちゃったら、ゲームの意味ないじゃん! やりがいがないにも程がある! たしかにピーチ姫という目標はあるけどさ、ステージを順番にこなしていくことが楽しいんだから。難しいステージだって、難しいからこそクリアした時の達成感は格別なんだよ。本当のこと言うと、姫なんてどうでもいいんだからね。むしろゲーマーのためにも、ピーチ姫には永遠に捕まっていてほしいよ。永遠回帰のごとく永遠に繰り返し敵に捕まって、僕たちを楽しませてほしいよ。まあ実際そうなってるけど。

先生 ならば、そのように人生もプレイしていけばよいのじゃ。人生にだって、強い敵や気味の悪い敵、山に谷に意地の悪い仕掛けが待ち構えておる。しかし、山や谷があるからマリオは楽しいのじゃろう? 人生だって、同じではないか? クリアまでの過程こそがゲームの醍醐味であるように、人生においても、目標に至るまでの道筋こそを楽しむ気概を持つのじゃ。楽しまぬまでも、立ち塞がる障壁に「何度でもチャレンジしてやる」という心意気で果敢に臨む。その覚悟があれば永遠回帰など恐れることはなく、その覚悟を有する者をニーチェは「超人」と呼んだのじゃ。人々よ、悲観することなく、諦めることなく、超人を目指せと。

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ゾンビの哲学」に救われた僕は、クソッタレな世界をもう一度、生きることにした。

さくら剛

さくら剛の超・哲学入門! 「とっつきにくくて、わかりにくい」、「でも、人生の役には立ちそう」。本書は、そんなやっかいな哲学を「冴えない青年“ひろ”が、古代ギリシア生まれの哲学者“ゾンビ先生”から学んでいく物語」です。哲学とは? この世...もっと読む

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