前々回、前回の記事のあと、いくつかのメッセージをいただきました。ありがとうございました。心温まる内容、勇気づけられる激励の数々に感激しました!
今回はその中から一つ質問を紹介させていただこうと思います。今後も引き続き、『感想戦』への参加をお待ちしています!
まずは読者の方からいただいた、質問の内容から。
「ヨルダン戦は本田の不在と遠藤の限界が露呈したと思っているのですが、本田の不在については前回の記事で3-4-3を採用することで解決の糸口が見えるのではという可能性を示してもらえました。
そこで、遠藤の代役、または遠藤を「なんとか活かせる」システムというものはあるとお考えでしょうか。個人的には、遠藤は前回のワールドカップ前年までがピークで、それ以降は鋭い読みは衰えないものの純粋に走力や身体能力が衰えていて、アリバイプレーが増えていると思っています」
では、以下の記事で質問にお答えします。
『遠藤システム』は明確にある!
遠藤の身体能力が過去に比べて衰えたのかどうかはハッキリとは分からないが、瞬発的に相手に寄せるスピード、1対1で仕掛けられたときの球際の競り合いなど、対人における守備力が心許ないのは確かだ。しかし、結論から言えば”遠藤を活かせるシステム”は明確にあると思う。
発想としては1575年の『長篠の戦い』における織田・徳川軍の鉄砲隊のようなものだ。
当時、無敵を誇った武田の騎馬隊が、織田・徳川の鉄砲隊によって撃退された。戦国時代の鉄砲には連射できないという致命的な弱点があったので、通常ならば射と射の間を突かれて騎馬隊に押しつぶされる恐れがあった。しかし、織田・徳川は馬防柵を作って騎馬の侵入を防ぎつつ、その柵のすき間から射的を行うことで応戦。
さらに鉄砲隊の陣列を三つに分け、一列目が発砲後、弾を装填している間に二列目が発砲する、といった段撃ち戦術を用いることで鉄砲の弱点をカバーした。その結果、織田・徳川軍は勝利を収めている。『武器』には弱点が存在するが、それをいかにカバーするかという戦術構築にチーム戦の面白みがある。
司令塔としての遠藤保仁はまさに鉄砲、その能力はワールドクラスだ。2008年クラブワールドカップではガンバ大阪と対戦したマンチェスター・ユナイテッドのサー・アレックス・ファーガソン監督が、同大会で最も印象に残った選手について、遠藤の名を挙げて称賛した。トラップやキックといったサッカーの基礎技術は日本人最高峰。さらに視野の広さ、試合の流れを読むゲームメークも他の選手とは比べものにならない。フリーキックという飛び道具もある。それらの長所が世界にも通用することは、過去の国際試合で実証してきた。
とはいえ遠藤も戦国時代の鉄砲と同じで、万能ではない。メッセージでご指摘を頂いたように、スプリントや球際の競り合いで発揮されるべき瞬発力やパワーが小さいため、肉弾戦に巻き込まれれば、外国人選手にあっという間に跳ね飛ばされるか、アッサリと振り切られてしまう可能性が高い。それはアジアの戦いでさえ散見される遠藤の弱点だ。
では、どのような視点で遠藤を活かす戦術を考えるべきか?
言い換えれば、遠藤にとっての馬防柵とは何か?
『こぼれ球を拾った回数』から遠藤を読み解く
彼のプレーを読み解く重要なデータとして、『こぼれ球を拾った回数』がある。2011年のJリーグでは全18クラブの選手中、なんと遠藤が1位を記録した。試合を見ているとわかるが、遠藤は味方選手が球際の競り合いを行っているとき、あえて加勢せずに距離をあけ、その周囲にポジションを取ってこぼれ球を拾おうとすることが多い。そのポジショニングのセンス、ボールがこぼれる場所の読みはさすが遠藤といったところ。
さて、徐々に『遠藤システム』の輪郭が見えてきたのではないだろうか。
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