名刺ゲーム

あなた、少々、プロデューサーという権力を勘違いしてるようだ。

家族も部下も切り捨て、人気クイズ番組のプロデューサーまで上り詰めた神田達也。ある夜、息子を人質にとられた神田は謎の男から「名刺ゲーム」への参加を命じられる。だがそれは、一度でも選択に失敗すれば息子に取り付けた爆弾のスイッチを押す、という条件付きの死のゲームだった! WOWOW土曜ドラマ化で話題の小説『名刺ゲーム』を集中連載! 人気放送作家がテレビ業界を舞台にサラリーマン社会の悲哀を抉り出す衝撃作。

3 玉虫色のスカーフの男

 The Name、それが人気クイズ番組のプロデューサーに出題するクイズ。いや、こんなクイズ、よく考えましたよね。

 達也さん、私からいきなりクイズのタイトルを告げられても、そのクイズの趣旨を聞こうという理性までは取り戻せていません。

 そりゃそうでしょう。家に帰ってきたら、高校生の息子がいきなり部屋の白い壁に手錠ごと磔にされてるんだから。そして、私の手にはリモコンがあって、それを親指で押すだけで、息子の首輪に仕込んであるものが彼の頭を吹っ飛ばしてしまうという状況。

 というか、崖っぷち? 私によってつくられた人工的な崖っぷちにたった数分の間に追い込まれたんです。その崖っぷちから助かる方法が、クイズって。

—あなたは番組が当たってから変わりました。今までの怨念を晴らすように。

 この台詞で、私がただのテレビファンじゃないってことが分かるわけです。ある目的を持ってこの部屋にいるということも。

—あなた、少々、プロデューサーという権力を勘違いしてるようだ。

 日々薄々感づいていることを人に言われるって、気持ちを見透かされているようで怖い。しかもそれを初めて会った他人に言われたわけですから。

—何が言いたいんですか? あんたは何がしたいんですか?

 喉から声を絞りだした達也さんに、The Nameがどんなクイズなのかを説明しなければいけません。時間はあまりありませんから。

—あなたの脳に少々頑張ってもらいましょうか。

—どういうことですか?

—全体の二%しか使ってない、なんて言います。知ってますよね?

 脳はもったいないことに全体の二%ほどの力しか使っていない、なんて言います。でも、二%よりもっと使っている人もいる。使いこなせている人がいるんです。

 素潜りの選手なんかそうなんです。あの人たちは、自分の心拍数を遅くしたりコントロールすることによって、より深い場所に長い時間潜ることができる。そのような体になるには、筋肉を鍛えるだけじゃダメなんです。ではどうするか?

 脳を訓練するんです。脳の中の呼吸・心臓を司る部位のストッパーを外す訓練をするんです。痛みを司る脳の部分が壊れれば、痛みを感じなくなりますよね? 例えば、画びょうの針に人差し指の腹を押しつけて、痛みを感じているのは皮膚じゃなくて脳なわけです。全ては脳が犯人なんです。その脳もトレーニングによってコントロールできるようになる。ストッパーを外すことができる。そうなんです、脳は努力次第でもっと使いこなせるんです。

—あなたも今日は脳をいつもより使ってくださいね。

—どうしたらいいんですか? 和也を解放するにはどうしたらいいんですか?

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名刺ゲーム

鈴木おさむ

家族も部下も切り捨て、人気クイズ番組のプロデューサーまで上り詰めた神田達也。ある夜、息子を人質にとられた神田は謎の男から「名刺ゲーム」への参加を命じられる。だがそれは、人間の本性を剥きだしにしていく《狂気のゲーム》だった――。WOWO...もっと読む

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