カッコわるい大人にはなりたくないあなたに読んでほしい、青春小説

京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う名著を選んでみた。21作目は、山田詠美の『ぼくは勉強ができない』。カッコわるい大人にはなりたくないあなたへ。この小説は思い出させてくれる。思いやりとか自然体とか、世間で適当に使われる言葉に隠された、本当に大切なことを。【重版出来しました】『人生を狂わす名著50』より特別連載。作家、有川浩も推薦! →公開は毎週木・金です。

カッコわるい大人にはなりたくないあなたへ

『ぼくは勉強ができない』山田詠美
(新潮社)初出1993

学校の勉強 VS 人生の勉強

不良じゃなくても、優等生じゃなくても、そのどちらでもない自分でも、社会で「自由」でいられる方法を教えてくれる青春小説!#不朽の青春小説 #高校が舞台 #中高生にもむかし中高生だった人にも読んでほしい! #学校で教えてもらえない勉強ってたくさんあるのだ #魅力的な女性もたくさん出てくる #よく読書感想文の題材にもなる本 #10代のうちに読みたい一冊


「あんたは、すごく自由に見えるわ。そこが、私は好きだったの。他の子たちみたいに、あれこれと枠を作ったりしないから。でもね、自由をよしとしてるのなんて、本当に自由ではないからよ。」

 高校生だった頃をだいぶ過ぎた私も、いまだにこの台詞を読むとぎくっと体が固まる。
 高校生のときにこんなことを言ってくる同級生がいたら、私はどんなふうに思っただろう?
自由であることがいいこと、とか、自由じゃない人を見ると嫌な気分になる、なんて言うのは、たしかに自分自身が本当は自由じゃないからだ。
 何かの枠に自分を押し込め、自分の目を偏見で曇らせる。その枠にとらわれている人を見ると、自分を見ているような気がして、嫌な気分になる。
『ぼくは勉強ができない』の主人公である秀美くんは、彼女の言葉を受け止め、こう考える。

もしかしたら、ぼくこそ、自然でいるという演技をしていたのではなかったか。変形の媚を身にまとっていたのは、まさに、ぼくではなかったか。ぼくは、媚や作為が嫌いだ。そのことは事実だ。しかし、それを遠ざけようとするあまりに、それをおびき寄せていたのではないだろうか。人に対する媚ではなく、自分自身に対する媚を。
人には、視線を受け止めるアンテナが付いている。他人からの視線、そして、自分自身からの視線。それを受けると、人は必ず媚という毒を結晶させる。毒をいかにして抜いて行くか。ぼくは、そのことを考えて行かなくてはならない。

 こんなふうに、高校生の私はまっすぐに人の言葉から何かを学ぶことができただろうか? あるいは今の私は、素直に自分の「媚び」という毒を知り、抜こうとすることができているだろうか?
 そんなことを考えたとき、ああそうか、これが学校の勉強とはまた違った「勉強」なんだな、と思ったりする。

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『人生を狂わす名著50』(ライツ社刊)著者、三宅香帆による文学レポート。  ふと「いまの文学の流行りをレポート」みたいな内容を書いてみようかなと思い立ちました! なんとなく、音楽や映画だと「ナタリー」みたいな流行をまとめる記事っ...もっと読む

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