あなたと私の見ている世界は違う」という言葉を哲学してみた。

哲学者カントは言った。「人間にとって普遍的な真理は存在するはずだ」。しかし、あなたが「キュイキュイ鳴く愛らしいアザラシ」と認識しているゴメちゃんも、実は別の人には「「ゲジャルモゴキジョリモォォ!!と鳴く呪滅怪怨骸鬼」という怪物に見えているかもしれない。書籍『(推定3000歳の)ゾンビの哲学に救われた僕(底辺)は、クソッタレな世界をもう一度、生きることにした。』より特別連載。

音を立てはじめたエリ先生と青年ひろの関係

「ほお……。エリが、ヒエロニュモスのことを話したのか……」

 水槽のアザラシを眺めながらゾンビ先生が呟いた。

「はい。僕にそっくりだって。ゾンビ先生の弟子だったんですよね? 愛弟子だったとか」

 ひろは人間の友達が少ない。人間よりもゾンビや魚の友達の方が多い彼の、行きつけの水族館がここ「海響館」である。

 海響館でイルカショーを見学していたひろは、奇遇にもゾンビ先生に遭遇した。今日はいつものゾンビコンビではなく一人のようだ。イルカショーでは観客の中から数名がイルカの餌やりを体験できるのだが、その選ばれた客の一人がゾンビ先生であり、先生はイワシを持つ腕ごとイルカに食いつかれると、そのままプールに引きずり込まれていった。どうやらイルカはゾンビ先生の体を食べ物だと勘違いしたようだ。だがイドラの呼気で認識が曖昧になっているお姉さんたちは誰もゾンビ先生の入水を気に留めず、20分後になんとか自力で再上陸を果たした先生に駆け寄ったのは、たまたま居合わせていたひろだけであった。

「そうじゃなあ……。愛弟子、と言っていいじゃろうな。しかし、わし以上にエリの方が、ヒエロとは深い絆があったんじゃ」

 幸いゾンビの腕はグルメなイルカの口には合わなかったようで、先生の腕はもげることもなく無事であった。ワカメのようにふやけた濡れガツラを被り、二人は現在「アザラシくんのぱっくんタイム」を見学するためアザラシの水槽前へ移動している。

「エリ先生が? 兄弟弟子だから? 同じ釜の人肉を食った仲だから? ……あ、でもその人は人間なんですよねたしか」

「うむ……。ヒエロニュモスは、エリクシアの恋人だったんじゃよ」

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

哲学を学ぶと人生が楽しくなる。ふざけたタイトルですが生きるためのヒントが詰まっています。

この連載について

初回を読む
ゾンビの哲学」に救われた僕は、クソッタレな世界をもう一度、生きることにした。

さくら剛

さくら剛の超・哲学入門! 「とっつきにくくて、わかりにくい」、「でも、人生の役には立ちそう」。本書は、そんなやっかいな哲学を「冴えない青年“ひろ”が、古代ギリシア生まれの哲学者“ゾンビ先生”から学んでいく物語」です。哲学とは? この世...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません