サボテン荘の人々。
−手強い乙女たち−

【第27回】男女4人が住む一軒家といえば、恋が生まれては消えていく、そんな運命を持っているはずなのだ。ところが、ぼくが知るサボテン荘の人々といったら……。恋どころの話ではない。

ぼくが主宰する「マームとジプシー」という演劇作品をつくる集団の、そのなかの4人が住んでいる一軒家がある。その家のことを、ぼくらはサボテン荘と呼んでいる。

そこに住むのは、3人の女子と、石井くんという男子の、合計4人。その3人の女子は、男性経験が乏しいというか皆無と言っていい。だれかと恋をしたこともないくせに、結婚したいとか、子どもがほしいだとか言う。

いやそのまえにまずは恋をするところから始めましょうか、と。ぼくなんかがアドバイスをしなくてはいけなくてつらい。恋をするところから始めましょうか、とアドバイスをするとHさんがぴんときていない表情をしていて。そして、彼女が言った一言に戦慄した。

「そういや、いままで、誰かのことを好きになったこと、無いんだよなあ……」

なんてことだ……そこからか……。Hさんの今年の目標は、「まずは、誰かのことを好きになる」らしい。

高校時代は野球部のマネージャーをしていたというAさんに、いや野球部なんてみんな、こう、盛ってそうだし、いくらでも恋だのなんだのがありそうじゃないか、というかそういうことが目的でマネージャーとかってなるんじゃないの、それか、球児なんてのはこぞってマネージャーに群がって奪い合うイメージだけれど、とぼくが指摘をすると。

「それは誤解だ。恋だのなんだのにうつつを抜かさずに、マネージャーとして本気で甲子園を目指していた。オトコなんかに目もくれず、そしてオンナとして意識もされず、ひたすら切磋琢磨していた。だから、そういう風に茶化さないでください」と怒られた。

ごめんなさい、Aさん……。 そして最後のひとり、Jさんは旅人が好きと断言している。でもなかなか旅人とは出会わないよね、出会っても旅人は、すぐに旅に出ちゃうからね。とかなんとかのんびりしたことを言っているから、もうJさんに関しては見守る以外に方法はない。

このようにサボテン荘の3人は、もうずっとこの調子なのだ。石井くん。よくやってるね。がんばれ。

又吉直樹さん絶賛!!

おんなのこはもりのなか

藤田貴大
マガジンハウス
2017-04-13

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演劇界のみならず、さまざまなカルチャーシーンで注目を集める演劇作家・藤田貴大が、“おんなのこ”を追いかけて、悶々とする20代までの日常をお蔵出し!「これ、(書いて)大丈夫なんですか?」という女子がいる一方で、「透きとおった変態性と切な...もっと読む

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コメント

makidekazu 今回は割りとまともだったw 5日前 replyretweetfavorite