前回の連載で、ビットコインに「価値」がある理由を説明しましたが、ビットコインが現実世界で価値を持ったのは、現実の「モノ」と交換できるようになってからです。
塩が貴重だった時代には、塩と何かを交換して、塩が通貨としての価値を持ちました。ビットコインも「モノ」と交換できるようになって、はじめて現金と同じ価値を持ったのです。
マイニングによってビットコインを掘り当てたといっても、それはただのデータのかたまりにすぎません。最初はそこらへんに落ちている石ころと同じで、何の価値も持ちませんでした。そのため、特定のゲームの中だけで通用する「ゲーム内通貨(ポイント)」と同じで、いきなり円やドルなどの現金に換金できたわけではありません。
「ピザ2枚=1万BTC」で最初の取引が成立
ビットコインが最初に現実世界で通用する「通貨」としての価値を持ったのは、2010年5月22日のことでした。フロリダ在住のプログラマーが「ビットコインでピザが買いたい」とビットコイン開発者のフォーラムに投稿し、それに応じたピザ屋がいて、「ピザ2枚=1万BTC」で取引が成立します。それまでただのデータにすぎなかったビットコインが、はじめて現実の「モノ」と交換でき、リアルに価値を持った瞬間です。
現在、5月22日は「ビットコイン・ピザ・デイ」と呼ばれて、ビットコイン関係者のお祭りの日になっています。
ちなみに、ピザ屋が手にした1万BTCを現在のレート(1BTC=約10万円)に換算するとおよそ10億円。とんでもない高値のピザだったことになります。ただし、そのピザ屋がその後ずっとビットコインを持っていればの話ですが。
ビットコインをピザと交換できたということは、米ドルとも交換できるということです。たとえば、「ピザ2枚=20ドル」だったとすると、この時点で「ピザ2枚=1万BTC=20ドル」という等式が成り立ちます。そして、米ドルと交換できるということは、日本円とも交換できるわけです。
仮想通貨に限らず、いったん「値」がつけば、それは経済活動に組み込まれます。たとえば、ある特定のゲームの中でアイテム交換のために使われる「ゲーム内通貨(ポイント)」も、お金を出してでもその「ゲーム内通貨」が欲しいという人がいて、それをネットオークションなどで取引できるようになれば、ただのデータに「値」がつきます。
理論上「交換できる」というだけでなく、いつでも交換可能な「場」があれば、そこに市場が立ち上がるのです。