築四十二年、牛込の加寿子荘はまだささやかに建っています。
並びの家はどれもここ数年で新しくなってしまった。同じくらい古かった隣家もついに取り壊しになり、新築されてピカピカになりました。元の住人は三階建の三階におさまり、一階と二階はマンションとなったようです。
かなり近いところで隣り合っているので、加寿子荘もその影響を受けざるをえない。私が加寿子荘に帰ってくると、隣の一階テラスの照明がセンサーだか何かを持っていて反応するらしく、共同玄関に着いたところでビカッと照らされる。気持ちのいいものではない。
加寿子荘の共同玄関を開けると右の扉は加寿子さん(大家さん)の部屋、左はどこかのマッサージ屋が倉庫代わりに借りているらしい部屋。一階の三和土でわたしは靴を脱ぎ、共同の下駄箱に入れて二階に上がります。靴が増えて、もう下駄箱の私の段はぎゅうぎゅうだ。
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