残酷でタフな世界を生きる小さいあなたへ
『悪童日記』アゴタ・クリストフ
(早川書房)初出1986
子どもは弱くて純粋 VS 子どもはしたたかで残酷
子どもは純粋無垢なんて思うと痛い目見ます。たったふたりで世界を生きた、この世でいちばん残酷でクールな双子の物語。#外国文学 #双子が主役 #日記体文学 #映画化(主人公の双子くんたちが良い) #戦争中の街が舞台 #処女作 #ゲーム「Mother」に影響を与えた小説としても有名 #続編『証拠』『第三の嘘』もあるよ #読んでいくうちにその残酷さで背中が凍ってくるのが快感になるからすごい
子どもが弱くてかわいくて純粋だ、なんて誰が決めたんだろう?
そんなことを言うのは、彼らを庇護したい支配したい大人になった証拠だ。
『悪童日記』を読むと、子どものまなざし、というものを思い出す。
弱いからこそ、子どもたちは誰よりも残酷に世界を見る。誰にも負けないように、強くなるために。そして何より、生き残るために。
『悪童日記』は、少年たちの秘密の記録だ。
少年というのは、戦時下、ある国で連れられてきた双子のこと。双子の母親が、「大きな町」から「小さな町」のはずれにある自分の母の家へ、彼ら双子を預けにきた。自分たちの家には、もう、子どもたちに食べさせるものがなかったから。
「魔女」と呼ばれる双子の祖母はなかなか強烈な人で、小さい子どもに対しても、人並みに働かないかぎり食事を与えない。双子は戦争中の「魔女」の家で、たくましく生きていかなくてはならなかった。
双子はやがて農作業を覚え、独学で読み書きを覚え、互いに協力して様々な鍛錬に励む。時には盗みやゆすりも行う。他国の性倒錯者の将校に助けられたり、隣人の兎口の少女を助けたりしながら、双子はタフに生き延びていく。
やがてこの国は他国の占領下に入る。終戦の間際、双子の母親は子どもたちを連れ亡命しようとするが、双子は拒否する。すると空から落ちてきた爆撃によって—。
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