進化とともにバージョンアップした心臓
循環器系とは、要するに血の巡りに関わる臓器のことです。
主役はもちろん心臓です。心臓は我々の知らないところで、昼も夜も休まず、生まれてから一瞬たりとも止まらず、身体中に血を送り続けてくれています。
心臓は四つの部屋からなっています(図‒5)。左右の「心房」と左右の「心室」です。心房は血液が返ってくるところ、心室は血液を送り出すところです。心房と心室が二つずつあるということは、血液の流れるルートが、二系統あるということです。すなわち、左心室から「大動脈」を通って全身を巡るルート(「体循環」)と、右心室から「肺動脈」を通って肺を巡るルート(「肺循環」)です。
なぜそんなふうになっているかというと、「ガス交換」(血液に酸素を取り入れ、二酸化炭素を排泄する)の効率がいいからです。
魚類にはこのルートが一系統しかないので、心房と心室が一つずつしかありません。だから、血液に酸素を取り入れるのは、全身をまわる途中でエラを通ったときに、ついでにということになります。これではゆっくり酸素を取り入れることができません。両生類は一・五系統で、心房は二つですが、心室は一つしかありません。ですから、肺で酸素を取り入れた血と、全身を巡って酸素を減らした血が混ざり、効率がよくありません。
爬虫類では心室に不完全な壁があり、鳥類と哺乳類では完全な壁ができて、進化とともに心臓もバージョンアップしたことになります。
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