せっかくのコンサートだから、違う質問にしましょうか」

28年間のSMAPの活動とその思いを、数々の言動から振り返り、幼少期から三十代に至るまでのファンの女性の28年の歴史と共に纏めあげ、「アイドルとは、ファンとは何か」を問い直すアイドルとファンのノンフィクション書籍『SMAPと、とあるファンの物語』。本書を公開する連載、20回目。森がオートレーサーの二次試験通過が報じられた5日後。脱退を危惧したファンが、コンサート中にメンバーに、こう問うたーー。

 春になり中学1年生になっていた私が森のSMAP脱退を初めて知ったのは、記者会見があった翌日、1996年5月7日の朝だった。

 もちろんとても驚いた。

 しかしファンとしてはあの春ツアーが森の参加する事実上最後のステージだったということの方が、なお驚かずにいられなかった。

 私は偶然この森ラストツアーを見に行っている。

 事実上6人最後のライブとなった「SPRING CONCERTʼ96 」は直前の年末年始ツアーの流れを引き継ぐもので、開催は東京、名古屋、大阪を除く地方会場のみとなっていたのだが、横浜に住んでいた私はこの年の春休みだけ、たまたま親戚の結婚式で北海道に滞在していた。一緒に行かないかと誘ってくれたのはやはりSMAPのファンクラブに入っていた、北海道に住んでいる年上の従姉だ。

 その時は旅行先でSMAPのライブを見に行けるなんてラッキーだな、それくらいにしか考えていなかった。

 私が行ったのは1996年4月2日、北海道・札幌の月寒グリーンドーム公演。

 森の脱退を知った瞬間から、あの日の北海道のコンサートにあった出来事が一体なんだったのか、子供なりにもうっすら分かるようになっていった。

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SMAPとそのファンの物語—あの頃の未来に私たちは立ってはいないけど

乗田綾子

転校を繰り返し、不登校にもなってしまった。思い焦がれた上京は、失敗した。願ったとおりの現実を生きるのは、難しい。だけど――。小学校低学年から30歳に至るまで、とある女性の人生にずっと寄り添っていたのは、親でも彼氏でもなくアイドルだった...もっと読む

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