アイドル戦国時代以降の“アイドルの伝え方” 前編

乗田綾子氏がアイドルへの愛情と畏怖と感謝を込め綴った書籍『SMAPと、とあるファンの物語』。文字通りファンという視座で書かれた本作だが、そんな彼女と『エンタメ』『Top Yell』『EX大衆』など多くの媒体に寄稿し、アイドル戦国時代の勃興期から「アイドル言論」に身を置いてきた大貫真之介氏が邂逅。ブームが定着し「太平の世」とも言えるこの時代において「アイドルをどう伝えたい」か。今回は前半部を公開!

アイドルを語る時こそ、難しいことを優しく伝えたい

乗田綾子(以下、乗田) (大貫氏の顔を見るなり)わー、師匠!!

—師匠!? そこからまず詳しく。

乗田 『SMAPと、とあるファンの物語』にも書いているんですけど、私は小さい頃から文章を書くことと、アイドルが大好きで。30歳を目の前に結婚して北海道に移り住んだんですが、そのことをキッカケにして、「アイドルが大好き」という気持ちと、「気持ちを文字にしたい」という二つの気持ちに人生で初めてちゃんと向き合った結果、ブログを2012年から始めたんです。ありがたいことに色々と反響を呼んでアイドルファンの方はもちろん、業界の方にも読んでいただけるようになったのですが、その中でも最初に私のブログに注目をしてくださったライターさんが、大貫さんでした。

大貫真之介(以下、大貫) へぇ~!知らなかった。

乗田 2013年の段階ではとっくに見ていただいていて。しかもTwitterでシェアもしてくださいましたよね。その時にあの大貫さん!? と驚いて。私はこの仕事を始める前から大貫さんのお名前は、雑誌等で拝見していただけでなく、すごく好きな文……人柄の伝わる、優しい文章を書かれるかただなぁと思っていまして。

大貫 何を言いだすんですか(笑)。恥ずかしい。

乗田 私はハロー!プロジェクトが好きで、大貫さんがよく書かれる乃木坂46さんは正直言って門外漢で。それでも、グッと引き込まれてしまうんですよ。大貫さんのインタビュー記事って、取材相手に対する敬意や愛情が根底にあるのが伝わってくる。それも併せて勝手にですが心の中で“師匠”と呼ばせていただいて。約4年越し、本日やっとお会いできました。

—大貫さんとしては乗田さんのブログに注目されたのはどういったキッカケで?

大貫 ……記憶にないんですよねぇ(笑)。すみませんっ。

乗田 えぇっ!? そこをなんとか振り絞って!!

大貫 いやぁ、4年前の話だから(笑)。単純に言って面白かった、それが一番。僕が乗田さんのブログを知ったのは、誰かがTwitterでシェアしたのがキッカケ。ちょうど2012年頃に僕はTwitterを始めたばかりで、アイドルを語る人の文を探すのが日課になっていて(笑)。こんなにあらゆることに愛情があって、面白い角度からの文を書く人がいるんだ!と。その中の一人に乗田さんがいた。僕もハロプロのことはあまり明るくないけれど、楽しく読めたというのがすごいなぁと。

—共に、フィールドは違えど、愛情と熱量を感じる文章を書かれていて、それが刺さった。

大貫 そうそう。それに、上手いんですよ。難しい言葉を一切使わず、長すぎずちゃんと伝える。それがスゴイ。

乗田 確かAKB48が大ブレークして、ももいろクローバーが注目されるようになった2010年以降から、学者の方や、今までアイドルに興味がなかった評論家の方々による、語りブームがきましたよね。確かになるほど!と思う文を書かれる反面、その視点しかない状態だとアイドルを語ることのハードルが高くなっていくような気がしていて。文化的で鋭く難しく、そんな見方が楽しめるようになった一方で、本来、アイドルって歌にせよダンスにせよ、「難しいことを優しく伝える」、そういうプロフェッショナルでもあると私は思うんです。だからアイドルを語る文章として、突き詰めた鋭い視点の他にもう1つ、アイドル本来の「優しく伝える」特性に沿った、気軽に広く楽しめる視点も同じ文化の中にあってくれたらいいなって、そういう思いもあって。

大貫 なるほど~。その意識はブログを始めた頃からありました?

乗田 あったんですけど、実際には最初の頃はいろいろ模索していました。その頭の中の理想をベストな形で届けるには一体どうすればいいんだろう?って。わからないからひたすら書いて、読者の方の反応を見て……そうして何年か循環させていくうちに、最初に想像していたものが文章としてだんだん固められるようになっていったと思います。

大貫 書きたいことはたくさんあるけれど、必要なこと以外脳内で削ぎ落としていったり?

乗田 します!難しい単語や濃いファンにしか伝わらないことはなるべく使わないよう心掛けて、新規でファンになった方にも伝わりやすいような文章を目標にしています。「伝える姿勢」という点では、大貫さんはどうやって、あれだけ愛が伝わる文を書かれているんですか?

大貫 えぇっ!?……説明しづらい(笑)。

乗田 そこをなんとか!!

大貫 ……僕がライターとしてアイドルのことも書き始めた頃って、雑誌記事で今ほどアイドルについて深く掘り下げるようなインタビューってなかった記憶があるんですよね。

—90年代から00年代前半のアイドルインタビューの金字塔といえば『BOMB』(学研刊)で連載されていた大槻ケンヂさんの「オーケンの私はあなたが好きでした」や、吉田豪さんの『元アイドル!』(ワニマガジン社/新潮社刊)がありますが、どれも現役アイドルを取り扱った著書ではないですからね。

大貫 豪さんが元アイドルを中心に深掘りして業まで伝えていましたけど、全体としてはその子を愛でつつプロフィールをなぞるようなインタビューが多い印象があったんですよ。もっと人柄がにじみ出たほうが面白いし、仕事への矜持も見えたほうがいいのになぁとは思ってました。まだ48Gや坂道シリーズが載っていない時の『EX大衆』(双葉社)で、ひとりにつき1/2とか1/3ページでグラビアアイドルを6、7人載っけるような記事がよくあって。全然文字量はないんだけど、取材時間が結構あったので、なんなら下調べをしまくって気になる話を聞いてみようと思って。余計な情報なのかもしれないけど。そこで意外と面白い話を聞けたうえに、自分でもこの形は面白いなぁと思う様になって。そんなことをやってるうちに、アイドル戦国時代になって乃木坂46も人気になって、他の媒体含めて長いインタビュー記事を載せるようになったので、そこにグラビアアイドル記事でやっていた形を応用させたというか。

乗田 へぇ! そういう経緯があったんですね。

SMAPファンのみならず、すべてのアイドルファンに捧げる、愛と愛情と情が込められた一冊。本作が「アイドル語り」のマイルストーンとなる。

この連載について

アイドル戦国時代以降の“アイドルの伝え方”

乗田綾子 /大貫真之介

ライブやラジオ、雑誌等でのSMAPの発言や行動を振り返りその歴史を語りつつ、ファンの目線から“アイドル"の意味と意義を読み解いた一冊『SMAPと、とあるファンの物語』。そんな入魂の書籍を上梓した乗田氏が、いわゆる「アイドル戦国時代」に...もっと読む

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コメント

ataru_mix 大貫さんとあの「小娘」さんの対談。早く後編が読みたい! 3年弱前 replyretweetfavorite

kaimu29 “アイドルって歌にせよダンスにせよ、「難しいことを優しく伝える」、そういうプロフェッショナルでもある” なるほど。だから私はアイドルが好きなのかもしれないな。 https://t.co/AXlUk5VyPs 3年弱前 replyretweetfavorite

u5u 乗田「 3年弱前 replyretweetfavorite

drifter_2181 「アイドル戦国時代以降の“アイドルの伝え方” 」前編|小娘(乗田綾子)/大貫真之介|cakes https://t.co/1tI3Bt4eW3 3年弱前 replyretweetfavorite