公民館の和室に集まって開かれていた「サワディ茶話会」はユウカの突然の問いかけによって、シンと静まり返った。
参加している女性たちは、各々顔を見合わせている。
なぜ、そうなっているのか理由を知らないユウカは誰かに直接聞いてみたかったが、相手が5人もいるので、誰に聞いてよいかもわからなかった。
「この中で平林荘にお住まいのご経験があるのは、どなたですか?」
ユウカがあらためてそう尋ねると、5人ともゆっくり手をあげた。
「あれ、全員ですか……?」
さっきまで、自分の子どもの留学事情を話していた片山智恵子がユウカに聞いた。
「ユウカさんって言ったっけ? 悠次郎さん、いえお父様のどんなことをお知りになりたいの?」
「いえ、知りたいのは父の恋人で……名前はわからないんですけど」
「ここにいる人は、あなたのお父さんのことはみんなよく知ってるわよ。その恋人のことは知らないけど」
「どういう意味ですか?」
さっきの不動産投資の相談会ではあまり口を開かなかった猪子由美という女性がか細い声でその質問に答えた。
「あなたのお父さまは、良い人よ」
平林さんが、固まった空気をほぐすように、全員とユウカに対して説明めいた言葉をゆっくりと話し始めた。
「ユウカさん、ごめんなさいね。実はあなたを今日ここに呼んだのは、私たちの思いをあなたにだけは知ってほしくてきてもらったのよ」
きょとんとしたままのユウカだったが、そう言われて首を縦に振った。
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