コンビニに行けばおにぎりも納豆も買える
丸山ゴンザレス(以下、丸山) 室橋さんは2004年から10年間、タイのバンコクに住んでいましたが、東南アジアのなかでタイは暮らしやすい国だと思いますか?
室橋裕和(以下、室橋) 東南アジアでの就職を考えたときは、トップだと思いますね。日本人が暮らしやすいという意味では、もしかしたら世界トップの国かもしれません。
丸山 タイに移住して仕事をするハードルは、この20年くらいでグッと下がった気がしますね。
室橋 もはや、海外就職という感じではなくなってきましたよね。どこに就職しようかネットで調べて、「勤務地はタイか。じゃあ応募しよう」という感じ。あまり抵抗なくフッと行ける国になりつつあります。
丸山 タイで起業する人にも大きな変化があったと思うんですよ。20年前は日本で未経験のことを始める人が多かったけど、今は日本でそこそこ成功した人が、より大きな成功を求めて行く。
スクンビット通りには日本食の店が多い。日本とまったく変わらない世界がそこにはある
室橋 そうですね。わかりやすいのは飲食店です。たとえば名古屋で1つ店を出して成功した居酒屋が、2号店を出すときにタイを選ぶとか。
丸山 なるほど。向こうで日本人がビジネスをするとき、タイ人をターゲットにするのか、在住日本人をターゲットにするのかで、規模が違ってきますよね。
室橋 そうですね。現在タイに住んでいる日本人は約7万人ですが、その規模ではどうしても小さい商売になる。大きく成功しようと思ったら、タイ人7000万人のマーケットを狙いますよね。
丸山 日本人居住エリアに、「鳥羽多゛(トリハダ)」というグレード高めの和食店がありますが……。
室橋 あの店は日本人が多いように思います。
丸山 「しゃかりき432"(しみず)」は? 大阪出身の2人組のお兄ちゃんがやっている。
室橋 あそこは日本人も多いけどタイ人の方が多いですね。店の前にモアイ像があって、お祭りみたいな賑やかな内装で。タイ人は、ああいうにぎやかな感じが好きですから。この3〜4年間で10店舗くらいに増えましたよね。ミャンマーにもお店を出してますし。
丸山 すごいっすね! タイでは、3食を日本食で過ごせるじゃないですか。そういう食の安定感は、海外暮らしでは大事な要素になりますか?
室橋 なかには「日本食は口に合わない」という日本人もいますけど、たいていの人はやっぱり、日本食を食べたくなりますよね。そういうときに、目の前に日本食屋がいくらでもあるし、タイのセブンイレブンに行けば、普通におにぎりも納豆もしょうゆも売っているのはありがたい。
丸山 消去法じゃなく、選択肢があるのは、やっぱりいいなと思いますよね。
室橋 インドネシアとかマレーシアだと、ハラルや輸入の規制の問題があるので、なかなか自由に選ぶところまでいきませんからね。