眠りたいけれど眠れない……
私のクリニックには、「眠れない悩み」を抱えた患者さんがたくさんいらっしゃいます。
「仕事が忙しいため徹夜続きで眠る時間がほとんどない」というIT業界の人や、「取引先や親会社が海外にあるため時差の関係で深夜にも働かないといけない」という人もいます。
体調を崩す一歩手前の患者さんもいて、睡眠が仕事だけでなく健康や生活習慣にも大きな影響を与えることを日々感じています。
睡眠に関する患者さんの悩みは、大きく分けて、「睡眠を大事にしていない」ケースと「眠りたいけれど眠れない」ケースの2つがあります。
前者の場合は、趣味の時間をたくさん取ろうとしたり、ダブルワークをしていたり、資格のための勉強をしていたり、やりたいことがたくさんある人です。
こういう人は寝ている時間がもったいないと睡眠時間を削ってしまい、昼間の本業に支障をきたしてしまっています。
この場合は、睡眠をしっかり取れているかどうかが仕事や人生の充実度を左右することをわかってもらえれば、自然と眠りを大切にするようになっていきます。
やっかいなのは後者の「眠りたいけれど眠れない」ケースです。この場合、「布団に入ってもなかなか寝つけない」「ストレスで目が冴えてしまう」「睡眠のリズムが崩れて、1日中ぼーっとしてしまう」など、さまざまな悩みがあります。本書を手に取ってくださった方もこうした悩みを抱えているのではないでしょうか。
一般的に、不眠の症状は「寝つきが悪い」「寝ている途中に目が覚める」「朝早く目が覚める」「ちゃんと寝ているはずなのに、起きたときに寝た気がしない」という4つのタイプに分かれます。
睡眠に関するアンケートを取ると、4つのうちどれか1つでも継続的に経験したことのある人が、5人に1人ぐらいはいます。アンケートの取り方によっては3人に1人というデータもあるので、眠れない悩みを抱えている人はかなり多いといえます。
実際に治療が必要なレベルの睡眠障害となるとそこまで多くはありません。それでも、およそ10人に1人は治療が必要なくらいの睡眠障害に悩まされているのではないかといわれています。
私のクリニックを受診された患者さんの悩みを2つご紹介しましょう。
ケース① 夜中の仕事で睡眠リズムが崩れる
金融系の仕事をしているある患者さんは、夜中の2〜3時頃に海外マーケットのピークが来るので、その時間帯にいったん起きて相場をチェックする、という生活を続けていました。