26歳。シネコン業最大手の正社員に採用される

マスコミ回りと並行して、小森谷くんは新しい職場を探していた。「何でも耐える、ってことじゃないだろ――」という土岸の言葉に突き動かされ、彼は今の状況を変えようとする。そこで、正社員としての採用が決まったのが、大手映画館のチェーンだった。
末期がんを宣告された男性の❝ありそうでなかった❞半生を描いた、『小森谷くんが決めたこと』を特別掲載!

 彼はマスコミ回りと並行して、仕事探しを始めた。

 履歴書を出し、面接には気合いを入れて臨み、自分の意志やビジョンを相手に明確に伝える。

 何でも耐える、ってことじゃないだろ──。

 土岸の言葉が、胸の奥で鈍く光り続けていた。

 耐えるだけでは、どこにも辿り着かない。おれたちは、うまくやんなきゃならない。

 二十六歳になった彼は、以前よりはるかに逞しくなっていた。

 長い青春を迷走し、厳しい仕事をくぐり抜け、いつの間にかタフに生きる実力が身についていたのかもしれない。

 おれたちは、うまくやろうぜ──。

 何度かの失敗はあったものの、やがて彼は正社員として採用してもらえることになった。

 驚いたことに業界では最大手の、全国にシネコンを展開する映画館のチェーンだった。

「すいません。一身上の都合で、アルバイトを辞めたいのですが」

「あ、そう」

 その配給会社は人の入れ替えが激しく、辞めるときも何も言われなかった。

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余命2か月といわれた男—小森谷くんが決めたこと

中村航

僕、余命2ヶ月って言われたんですよ。でも、生き残っちゃいましたけど――。末期がんを宣告された30代男性の“ありそうでなかった”半生を、「100回泣くこと」の著者・中村航が小説化!

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