「誰だよ、オマエ」とは思う
「アベノミクスに、もっと人の気持ちを盛り込んだユリノミクスを!」との奇怪なスローガンが聞こえてくる現状にあって、最も忘れられているのは「人の気持ち」であることがより明確になってきているのだが、与野党問わず、どんな「○○ノミクス」を提示する人も、突発的な選挙の風を読むのに必死なので、目が泳いでいる。そんな選挙報道が重なる中に挟み込まれたのが、カズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞のニュース。しかし、あちこちで村上春樹の受賞を勝手に待ち構えていた「ハルキスト」と称される人たちの目はちっとも泳いでいなかった。確かな与党、動じない与党という感じの振る舞いだった。
「うーん、そうか、カズオ・イシグロかぁ」と頭を抱えながら、彼ならば納得です、と言わんばかりの余裕を見せる姿は、長期安定政権のごとし。今年のイシグロも、去年のディランも春樹さんと深い関係がありますね、などとコメントしている人もいて、連立政権を提案するかのごとし。決して口には出さないけれど(今、出すけれど)「誰だよ、オマエ」とは思う。
確実にテレビに映る場所に出かけていく人
そもそも、ココに行けば確実にテレビに映るという場所にいそいそと出かけていく人たちとは、一定の距離をとりたくなる。『笑っていいとも!』が始まると、スタジオアルタの前に集う人を映すのがお決まりだったが、携帯電話を耳にあてて誰かに「今、オレ出てるよ!」と伝えながら手を振る人が頻繁にいた。電話を受けた誰かは「うおー、マジだ!」と興奮するだろうが、おそらくそれ以外の数十万人規模でアナタのその姿を痛々しいと思っている。痛々しいと思われることを想像できていないのだとしても、想像できているがそれより電話で伝えたい意欲が上回っているのだとしても、一定の距離をとりたくなる。
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