神田松之丞“絶滅危惧職”講談師を生きる!

第十三回 二ツ目になり、講談の魅力を再確認した

東京の演芸界では、若手の男性講談師が希少な存在である。神田松之丞は、絶滅危惧職と言っていいほどに成り手の少なくなった、その講談師だ。真打という近い未来を見据えて、彼はこれからどこに向おうとしているのだろうか。電子書籍文芸誌「yom yom」に掲載された人気連載を出張公開!

 落語芸術協会の興行において、松之丞の二ツ目昇進披露が行われたのは六月の、蒸し暑い時季だった。

「とにかく、結果を出すんだ、とそればかり考えてました。それまでは前座の上がりで聴いていなかったような真打も楽屋で耳を傾けてくださっている時間帯に出番があるわけですし、客席は温まっているわけで言い訳もできない。また、新宿末廣亭、浅草演芸ホールといった会場に応じた感じでできるかということも見られている。もう披露目のある三十日の間はすべて試されている状況でした」

 披露目の間ずっと掛けていたネタの一つが「寛永宮本武蔵伝」の一話である「山田真龍軒」だった。話としては地味な部類に入り、他にやり手のない読み物だった。

「当たり前なんですけど、漫談で笑わせても意味がないんで、講談でうけなくちゃいけない。『山田真龍軒』は非常にわかりやすいんです。しかも講談らしい。トータルで考えたときに、その読み物になってきましたね。実は、それが僕が見つけた宝の山の一つになりました。宮本武蔵と虚無僧、これが鎖鎌の達人であることが後でわかるんですけど、対峙して、最終的に武蔵が勝つというだけの単純な話なんです。でも二人の男がただ戦ってるだけでお客さんは面白い。それはエンターテインメントの基本形なんです。別に変なくすぐりが入ってるからとかじゃなくて、単純にそれって面白いよねっていうのを、このネタが気づかせてくれました。そのままの筋で話の気迫みたいなものが体に完全に入っていれば、それだけでお客さんは湧く。講談ってこんな魅力あるよねっていうのを再発見した僕の成果みたいなものを、披露目で出せたかなと思います。こんなに単純なものがおもしろいんだという。確かにそうなんです。往来歩いてて、人と人とがけんかしていたら、観ちゃいますから。ましてやそれが侍と虚無僧で、片方が武蔵だったら目は離せなくなるでしょう。侍が歩いているだけでも実はエンターテインメントが成立するという、講談の基本の基本みたいなのを発見しましたよね」

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絶滅危惧職、講談師を生きる

神田 松之丞,杉江 松恋
新潮社
2017-10-31

この連載について

初回を読む
神田松之丞“絶滅危惧職”講談師を生きる!

神田松之丞 /新潮社yom yom編集部 /杉江松恋

ここ数年、演芸ファンの注目を集め続けている男がいる。 神田松之丞、1983年生まれの33歳。90年代以降、東京の講談界では入門者の多くが女性であり、日本講談協会にも、もう一つの講談団体である講談協会にも、彼以降に入門して現在まで現...もっと読む

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