北野武「文化勲章でももらっちゃって、立ちションベンで捕まりたい」

常識を超えたヤクザ映画で、新境地を開拓し続けてきたシリーズ最新作『アウトレイジ 最終章』が公開されました。「全員暴走」のキャッチコピーで知られる曲者の役者たちと、北野監督はいかに向きあい、その魅力を引き出してきたのか。
聞き手に、映画史・時代劇研究家の春日太一さんを迎え、監督の北野武さんに、濃密なお話を伺いました。

落差がないとつまんない

— たけしさんはかねがね「お笑いの基本はフリとオチ」とおっしゃっています。

北野武(以下、北野) うん。

— それは「アウトレイジ」シリーズでの役者のお芝居でも活きているように思えます。例えば一作目『アウトレイジ』(2010)の石橋蓮司さん、二作目『アウトレイジ ビヨンド』(2012)の中尾彬さん、そして今回の三作目『アウトレイジ 最終章』の大杉漣さん。威張った感じのヤクザ役を作って来た役者さんたちが毎回登場しますが、彼らのそうした芝居自体が前フリになっていて、その後の情けない場面がオチとして効いている。その辺の計算はあったりするんでしょうか。

北野 それはやっぱりお笑いと同じだよね。チャップリンなんかよく言うけど、ホームレスのズボンのケツが破れたところで誰も笑わないけど、総理大臣のケツが破れたら、みんな笑う。地位や権力とのギャップは大事なんだ。石橋さんがやるからには暴力的な悪の親分になるわけだけど、それが情けない悲鳴をあげるから笑うんだよね。その辺のチンピラがやったって何もおもしろくない。
 俺なんかはコメディアンだから、自分の権威をわざと上げたいんだよ。なんなら文化勲章まで欲しいわけ。それで立ちションベンで捕まりたい。その日の飯も食えないようなコメディアンが立ちションベンしたって何もおもしろくない。だから総理大臣ぐらいまで上がんねえかなと思ってる。そしたら万引きして捕まっても笑えるでしょ。

— たしかに、そういうギャップを楽しもうという価値観がアウトレイジの三作には詰まっています。

北野 うん。落差とかね、そういうのをやんないとエンターテインメントとしてはつまんない。

— Vシネマとかのヤクザ映画ですと、出てくるヤクザたちはカッコイイばかりでそうした落差は出にくいですよね。一方、Vシネマで活躍している役者さんたちも、このシリーズには出ていて、それぞれに味を出しているように映っています。彼らに対してはどう演出しましたか。

北野 「それはダメだ」って時は演技指導はする。芝居しようとするとVシネマぽく映るんだよね。でもあの子たちは体を張るから、アクションはできるんだ。だから「余計な芝居しなくていい」「ヤクザヤクザやんなくていいよ」って言う。

— ここでも、それぞれの役者の特性を理解した上で演出しているんですね。

北野 だから使いどころを間違えると大変だよね。西田敏行さんたちと一緒に座って芝居したらダメになっちゃう。動いてないと。
 あいつらも本当はあの西田さんたちの役をやりたいんだろうけど、それは芝居の基礎が違うから。それで殴る蹴るをやらせるんだけど。殴る蹴るは殺陣師が言ったとおりに殴るとパターン化しちゃうんだよね。殴って、起き上がらせて「立てっつってんだろ!」って。そんなの見ると嫌になっちゃう。誰が「立て」って言われて立つんだよって。何発も殴ることはない。一発で終わるに決まってんだよ。そういうのは全部直したけどね。

土佐犬はライオンに敵わない
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北野武が語る一発勝負の演出論

北野武

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コメント

kito708 北野武「今回ね、あんまりセリフは出てこないんだけど、岸部一徳さんを使ったの。大杉漣さんにそれまで従っていたのが、ある場面で急に「お前なんか単なるサラリーマンやないかい」って言った時の落差が欲しくて」 約3年前 replyretweetfavorite

RieDorji 人の個性を見抜ける人に興味がある。やっぱりたけしさんすごいな~。 約3年前 replyretweetfavorite

muratayukizane 引用〈木下惠介監督や市川崑監督といったかつての巨匠たちは「キャスティングの段階で映画監督の仕事は六割、七割決まる」とおっしゃっていました。それだけ、役者の特性を〉  約3年前 replyretweetfavorite

noriwo0929 最後のたけしの写真が怖くて仕方がない。 約3年前 replyretweetfavorite