さまざまな企業を訪問すると、「上から目線」の人に出会う。
「上から目線」は嫌われがちではあるが、とくに悪いことか、といえば、私はあまりそうは思っていない。
特定の目的で「上から目線」を使っている人は、少なからず存在する。
たとえば、多くの独裁的な経営者は「上から目線」の方が多い。これは自然なことで、認知心理学的に、人は「自信にあふれた人」を信用する傾向にあるからだ。
したがって、尊大に振る舞うことにより、「社員が経営者に疑いを持たない」ということを彼らは経験的に知っているのだ。
また、LINE の執行役員であり、メディアの専門家である田端信太郎氏は著書『MEDIA MAKERS』(宣伝会議)の中で、「上から目線」について次のように述べている。
ネット上では、新聞や雑誌といった旧マスメディアに関わる大手企業の社員を指して「上から目線」の「勘違いマスゴミ」などと揶揄し、罵倒するムードがあります。私も、その気持ち自体はよくわかりますが、プロとしてメディアの世界で満足な報酬を得ようとするならば、「ナメられてしまえば、商売はあがったり」であり、一定の「上から目線」 はある意味では、当然の前提なのです。
「権威」を必要とするマスコミの方々、あるいは専門家、管理職たちが「上から目線」を使うのは意図的であり、とくに批判されるべきことでもない。世の中には「上から目線の専門家」「上から目線の上司」を好ましいと考える方も数多くいる。
ただし、不幸なのは「本人が自覚していない状態で、知らず知らず上から目線になっている人」である。なぜなら、ほとんどの人にとって、その人は「単なるコミュニケーションのとりづらい人」になってしまうからだ。
友だちや家族に疎まれるばかりか、仕事でかなりの損をしているだろう。本人に明確な悪気がないのに、意図せず嫌われてしまうのであれば、それは気の毒なことでもある。
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