最近、「承認欲求」という言葉をよく耳にする。web 上で気軽に承認をやりとりできるツールが提供されているからかもしれない。
そして、「承認欲求」といえば、ある人物のひと昔前を思い出す。
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彼は悪い人ではなかったが、1つだけ褒められないクセがあった。それは「仕事を抱え込んでしまうこと」だった。
若手で経験も浅かったその人物は、自分が引き受けられる以上の仕事を「褒められたい」「失望されたくない」という理由で引き受けてしまい、結局あとで問題が発覚する、という こともしばしばだった。
ええカッコしいのその人物に業を煮やした上司は、一喝した。
「その場しのぎで安易に仕事を引き受けるのはやめろ。できないときは、できないと言え」
「そういうわけでは……」
「言い訳はするな。実力に見合わないことをしても、認められるどころか信頼を失うだけだ」
「私は悪くありません。頼まれたら引き受けてあげたいのです」
「違う、おまえは嫌われたくないと思っているだけで、自分の実力を認める勇気もない」
「しかし……」
「おまえが『できる人間と思われたい』と願っていることは理解できる。だが、自分の仕事を振り返って見てみろ。あせって自分を大きく見せようとするな」
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