人に仕事を依頼するのが苦手な人はけっこういる。
たとえば、管理職になったにもかかわらず「自分でやったほうが早い」と手を動かしてしまう人が数多くいるが、それではマズい。人にやってもらわなくてはならないのが管理職である。
したがって、相手にこちらの依頼を確実に遂行してもらうためのコミュニケーションスキルは、必須であるとともにマネジメントの要諦でもある。
だが、「こちらの依頼を確実に実行させる」とひと口にいっても、その実践はそれほど簡単ではない。
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簡単な打ち込み作業を、あなたがアシスタントにお願いするとしよう。
「こちらの営業資料のデータを、急ぎで、エクセルに打ち込んでほしいんだけど」
アシスタントは言う。
「今日はけっこう忙しいんですが……」
「夕方までになんとか!」
「わかりました……」
しばらくしたあとに様子を見ると、期待どおり打ち込まれている……と思いきや、少し見ていくとなんかデータがおかしい。
「ここ、間違っていますよ」と指摘すると、「あ、すみません」と直してくれた。
だが、あなたは少し不安だった。もう数箇所、データを細かく見ていくと、ほかの部分も少しずつミスがある。
おいおい……、ミスだらけじゃないか……。不安になってアシスタントの人を呼ぶ。
「これ、ほかの場所にもけっこうミスがあるけど、きちんとチェックした?」
「いえ、急ぎだとうかがったので、ひとまず打ち込みました。ミスが多少あるかもしれません」
「かもしれません、じゃないよ。これって大事な営業のデータだよ。間違っちゃ困るんだよ」
アシスタントはムスッとしている。
「わかりました。もう少しお時間をいただけますか」
あなたは疲れてつぶやく。
「こんなの、言わなくてもわかるだろうに……」
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