28年間のSMAPの活動とその思いを、数々の言動から振り返り、幼少期から三十代に至るまでのファンの女性の28年の歴史と共に纏めあげ、「アイドルとは、ファンとは何か」を問い直すアイドルとファンのノンフィクション書籍『SMAPと、とあるファンの物語』。本書を公開する連載、15回目。SMAPという枠から飛び出し邂逅した、演劇界の大物。木村は、自らの相克するアイデンティティーと直面することとなるーー。
「なんでこんな歌が下手な人達がいるんだろうってホントに思ってた」
「リスペクトできなかった」
これは10代の頃に木村自身が抱いていた、彼のアイドル観である。
ジャニーズのレッスンに通い始めたのも初期の木村にとっては「体も動かせるし、部活みたい」というだけであり、それはSMAPのメンバーとなった後も大きく変わるものではなかった。
「適当に女の子にキャーキャー言われて、『衣装のTシャツもらっちゃったよ』とか、『こんなラブレターみたいなの来たよ』とか。その程度の意識」
そんな彼に転機が訪れたのは、まだSMAPがCDデビューしていなかった1989年のことである。
青山の喫茶店で、16歳の木村はある男性に挨拶をした。
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SMAPの28年間の活動と、とあるファンの女性の28年間。決して交わることはなかった。でも、支えられていた。そんな両者の紆余曲折の歩みから見えてくる、アイドルの“意味”。アイドル文化が生み落とした新世代の書き手によるSMAPとそのファンのノンフィクション。