肺活量の乏しさは武器でしかない。
−たまらなくさせるその声−

【第22回】「彼女の口から微かに出たとたん、すぐに落下していってしまう音たち……」。今回は、どこまでも愛おしく、切なく、「あのこ」の声を求めてしまうアラサー男子のセンチメンタルな独白タイムです。秋ですね〜。

「のどに粉が貼りつくんだよね、このクスリ」

なんて言った、あのこはいま、なにをしているんだろう。あのこはたしか、ぜんそくみたいなかんじで。アドエア、っていうシュコーって吸うタイプのクスリを常備していた。アドエアは、まるいカタチをした浅田飴の缶みたいな、ちょうどあのサイズのプラスチックでできたもので。カチッとすると、吸うところに粉が補てんされて、それを吸うみたいなかんじのものだ。グーニーズの主役のあいつが持っているのよりも、もうちょっと近代的なかんじの。あれを常備していたあのこ。もちろん、声はちいさくて、ぼくはその声をきくのがたまらなく好きだった。ぼくだけが聞き分けることができる音みたいで、それがよかった。

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2017-04-13

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演劇界のみならず、さまざまなカルチャーシーンで注目を集める演劇作家・藤田貴大が、“おんなのこ”を追いかけて、悶々とする20代までの日常をお蔵出し!「これ、(書いて)大丈夫なんですか?」という女子がいる一方で、「透きとおった変態性と切な...もっと読む

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